登山用のバーナーといえば、寒い場所でも比較的火力が落ちにくく、軽量かつコンパクトに収納できるOD缶(アウトドアガス)を燃料に使うタイプが一般的です。しかし、SOTOが発売した新作バーナー「トレックマスター」は、そんな従来の常識を気持ちよいほどに裏切る画期的なCB缶(カセットガス)対応バーナーです。
なぜ、CB缶を燃料にしても山でも使えるバーナーに仕上がったのか、実際にフィールドで使いながら、その理由に迫ってみましょう。
◼️年間ガス缶消費数は、CB缶が1億本以上に対し、OD缶は数百万本

日本国内市場の年間ガス缶消費数は、CB缶が1億本以上、OD缶が数百万本と言われているほど、CB缶が圧倒的に普及しています。しかし、CB缶燃料は安価で手に入りやすい反面、寒冷地で使うと火力が落ちてしまう(ドロップダウン)デメリットがあり、登山用としてはOD缶が選ばれがちでした。
そこでSOTOは、昨シーズンから寒冷地でもドロップダウンしづらいパワフルなCB缶燃料「CBタフ」を発売。同時に、チタンを贅沢に使った軽量なCB缶タイプのコンパクトストーブ「トライトレイル」をリリースしました。従来のOD缶タイプのバーナーに引けを取らない、登山シーンにも対応できる軽量でパワフルなCB缶関連商品の開発を進めてきたのです。
外気温の影響で燃料ボンベが冷えて起きるドロップダウンには、トライトレイルに搭載されているマイクロレギュレーターが力を発揮(点火後から数分間は高火力を得られる)します。しかし、連続使用による気化熱の影響で燃料ボンベが冷やされて起きるタイプのドロップダウンには、いくらマイクロレギュレーターを搭載していても対応することは困難です。
そこで、満を持して発売されたのが「トレックマスター」。CB缶タイプの弱点だった“寒さに対する弱さ”を徹底的に克服した、画期的なバーナーです。従来のCB缶タイプのバーナーと大きく異なるポイントは、 “液出し燃焼構造”を採用している点にあります。これにより、CB缶タイプのメリットであるランニングコストの良さと、寒さに対する弱さを克服したいいとこどりなバーナーに仕上がっています。
◼️寒さに対する強さを実現した「液出し燃焼構造」とは

ちなみに、「液出し燃焼構造」とは、ガスを液体の状態でバーナー部へ供給し、ジェネレーターで気化させてから燃焼させるシステムのこと。多くのバーナーは燃料ボンベ内で液体ガスを気化させてから使いますが、気化する工程で熱が奪われ、ドロップダウンが生じてしまいます。
トレックマスターは液体の状態のままガスを使うことで、寒冷な環境下で長時間燃焼させてもドロップダウンが起こらず、安定した火力が得られるのが特徴です。気化したガスを使う構造の場合は、ガス缶内の沸点が低い種類のガス(プロパン)から先に気化するので、寒冷地で使えば使うほど火の勢いは落ちます。対して、液出し構造は常に数種類のガスが混ざった状態の液体をそのまま使うため、いくら使用してもガスの混合比が変わることはありません。

気になる重量に目を向けてみましょう。無駄を削ぎ落とし、CB缶タイプのストーブとしてはかなり軽量な約195gという軽さを実現しています。
収納サイズもかなり小さく、幅90mm、奥行70mmというコンパクトなサイズにまとめることができ、450mlマグの直径にすっぽりと収まります。

さらに、バーナーヘッドとガス缶が分かれた分離型(しかも、燃料ホースが超絶しなやか!)なので、不整地でも安定するポジションを見つけやすいのもポイント。高さ105mmという低重心、かつ耐荷重は2kgと、見た目以上にタフな作りは安心して使えます。

SOTOが誇るCB缶タイプの大定番モデル「レギュレーターストーブ」と比べると、軽量・コンパクトなので持ち運びやすさの面でだいぶ分があります。同じくCB缶+分離型の「フュージョン」にも似ていますが、50gほど軽く、寒さに対する強さもトレックマスターが一枚上手です。
さらに、山でも人気の軽量なモデル「ウインドマスター」や「トライトレイル」と比べると、連続で使用しても火力が落ちづらく、ゴトクもしっかりしているので料理がかなりしやすい印象でした。山でのご飯は「お湯を沸かしておしまい!」という方は別として、ある程度料理も楽しみたい方には扱いやすいバーナーでしょう。