尾瀬には、群馬県、福島県、新潟県からアプローチできるが、そのなかでも群馬県の入山口は利用者が最多だ。その入山口があるのが片品村。県北部の尾瀬の麓に位置し、登山&ハイキングをはじめ、高原リゾートや温泉などさまざまなレジャーが楽しめる観光天国だ。
尾瀬への入山口は「鳩待峠」をメインに、「大清水」、「富士見下」の3つがあり、いずれも尾瀬戸倉を中継点として経由する。また、群馬県側の入山口はマイカーだけでなく、新幹線+バス、季節運行の高速乗合バスなどの移動手段も充実。山小屋や飲食スポットも充実し、さらに2025年9月1日から「鳩待峠」に山ホテル「LUCY尾瀬鳩待 by 星野リゾート」がオープンするなど、ますます充実度が高まっている。
■尾瀬ヶ原や至仏山の拠点「鳩待峠」

群馬県片品村にある尾瀬への3つの入山口で、最も利用されているのが「鳩待峠」。村内の尾瀬戸倉から乗り合いバス、またはタクシーでアクセスできる。広大な湿原が広がる尾瀬ヶ原、花の宝庫である至仏山、眺望のよいアヤメ平などさまざまな尾瀬のポイントへと行くことができる。
本州最大の高層湿原が広がる尾瀬ヶ原は、尾瀬を代表する人気スポット。その尾瀬ヶ原まで、鳩待峠からなら下りのみでアプローチ。広葉樹が広がる森歩きを楽しみながら、山ノ鼻まで下り、尾瀬ヶ原に入っていくことができる。


尾瀬ヶ原の湿原は、上田代、中田代、下田代による3つのエリアに分かれ、歩きやすい木道が整備されている。至仏山と燧ヶ岳の2つの山に囲まれた広大な湿原には、ミズバショウやニッコウキスゲなど季節ごとの花が咲く。また、あちこちに点在する池塘では、水生植物も見ることができる。アップダウンがほぼないルートをのんびりめぐりながら、美しい景観と湿原植物を楽しめるのが尾瀬ヶ原の魅力だろう。




■尾瀬沼にアプローチできる「大清水」

「大清水」は群馬県から、福島県方面の尾瀬沼に向かう玄関口。大清水のバス停が入山口で、ここから次の休憩ポイントの一ノ瀬休憩所までは1時間の道のりとなるが、6月中旬から大清水~一ノ瀬休憩所を結ぶ低公害バスが利用できるので、約3kmほどの距離を楽に移動できる。
一ノ瀬休憩所から三平峠を登ると、最終的に三平下という尾瀬沼の南岸に着き、ここから右のルートに向かうと、山小屋やキャンプ場、尾瀬沼ビジターセンターなどがある東岸。足を延ばすとニッコウキスゲの群生地として知られる大江湿原に行くこともできる。
尾瀬沼の西端に沼尻という場所があり、沼の水がここから沼尻川として流れ出ている。この川が群馬県と福島県の県境になっており、川沿いに進むと、白砂峠を越え尾瀬ヶ原方面へと抜けることができる。
■アヤメ平に向かう「富士見下」

「富士見下」は、富士見峠を経てアヤメ平に向かう玄関口。かつては主要登山口のひとつとしてにぎわったが、鳩待峠の入山口が整備されてからは人がまばらになり、静かな山歩きが楽しめるルートだ。
アヤメ平は尾瀬ヶ原の南部に位置する湿原で、至仏山と燧ケ岳を一望できるビューポイントとして知られている。また、尾瀬ヶ原より標高が高いため、下部で見ごろを過ぎた花でもここならちょうど開花時期、なんてことがある。

また、アヤメ平は鳩待峠からも行くことができる。富士見下から登ると距離が長いため、鳩待峠からアヤメ平を目指し、下山ルートとして富士見下を利用するのもありだ。
富士見峠から尾瀬ヶ原に抜けていくこともできるが、2025年7月現在、竜宮と見晴に向かうルートはどちらも途中の長沢橋及び八木沢橋が破損しているため、通り抜けができなくなっている(長沢橋については、8月上旬に修繕を完了予定)。
■花の百名山「至仏山」

日本百名山の一峰である至仏山。植生保護のため、5月7日から6月末までは閉鎖され、開山とともに夏の登山シーズンがはじまる。鳩待峠と山ノ鼻から登れるが、山ノ鼻~至仏山間は登りのみ利用可能で下ることはできない。鳩待峠から入山した場合はピストンし、山ノ鼻から登った場合は鳩待峠に抜けていく行程になる。
至仏山のピーク付近の稜線は視界が開け、眼下に尾瀬ヶ原、東側には燧ヶ岳や会津駒ヶ岳が一望できる。日光連山や谷川岳、上州の山並みまで見渡せる開放的なパノラマビューが格別だ。

至仏山は高山植物の宝庫として知られ、花の百名山にも選ばれている。蛇紋岩(じゃもんがん)という岩石でできていることから、尾瀬ヶ原や林間に咲く花とは違った蛇紋岩地特有の植物を見ることができる。例えば、「尾瀬」の名を冠したオゼソウは北方系植物の生き残りとされる希少な花。谷川岳や北海道の一部にしか生えないという。