鹿児島県指宿市は、名物「砂むし温泉」が体験できる指宿温泉など、滞在にぴったりな温泉地に恵まれている。ここを拠点に市内観光に繰り出すなら、指宿らしさを味わえる施設見学がおすすめ。歴史ある焼酎蔵から、廃校を活用したブルワリー、特産品のかつお節工場などを見学でき、さらには開聞岳を望む日本最南端の駅や、その山を御神体とする神社までローカル列車やバスなどを利用してめぐることができる。

■廃校をリノベーションした「いぶすきブルワリー」

小学校の建物をそのまま再利用したクラフトビール醸造所。指宿市の新たな観光スポットになりそうだ

 JR指宿枕崎線・西大山駅から徒歩で25分ほどの距離にある「いぶすきブルワリー」は、2025年4月にオープンしたばかりのクラフトビール醸造所。2021年3月に閉校した徳光小学校の跡地をリノベーションして誕生した施設だ。

 醸造所オーナーの今奈良 孝さんは、もともと市内で高齢者介護や保育事業を営んでいた社長。指宿は“東洋のハワイ”と言われているのに「クラフトビールがない」という声を聞き、10年ほど前から「クラフトビールで地域を盛り上げたいと考えていた」そうで、廃校した小学校を利活用するために、市から敷地と建物を借り受けて醸造所を整備した。

建物内は小学校の面影が残り、昇降口の下駄箱はきれいに塗り直されて商品の展示棚として使われていた
家庭科室を醸造所にしたというチョイスがいい
醸造所の黒板には「ボイラーON」など仕込み作業のメモがチョークで書かれている

 醸造所はかつて家庭科室だったところに設置されており、フルーティーで女性でも飲みやすい「いぶすきIPA」、クラシックな「いぶすきラガー」、そしてフルーツを使用した季節限定のビールを仕込んでいる。季節限定ビールは地元特産品を意識して、まずは夏に徳光スイカのビールを作った。秋に向けてパッションフルーツを仕込んでおり、「次は何にしようか」と試行錯誤中。なお、醸造所の見学は予約制だ。

黒板に小学校の校歌が音符付きで書かれているレストラン「廃校キッチン麦と庭」
工場直送のクラフトビールを、瓶ビールや生ビールで味わえる

 また、音楽室だった場所には「廃校キッチン麦と庭」がオープンし、クラフトビールのほか、「黒豚ピザ」や「黒豚焼きカレー」、「オクラのジェラート」など特産品を盛り込んだメニューを用意。人気は限定5食の「ダブルハンバーグ給食」だ。また、クラフトビールの飲み比べ3種類セットもあり、お供にぴったりなウインナーやナッツなども提供している。

ピザ、焼きカレー、ドリアなど高温の釜で焼き上げたメニューを熱々でいただき
アイスにオクラで作ったねっとりと濃厚な蜜と乾燥オクラをトッピングしたオクラジェラート
醸造所見学&ランチも楽しめる「いぶすきブルワリー」