国立公園「尾瀬」は群馬県・福島県・新潟県の3県からアプローチでき、尾瀬北部の玄関口となるのが福島県の檜枝岐村(ひのえまたむら)だ。尾瀬を代表する山といえば至仏山(標高2,228m)と燧ヶ岳(標高2,356m)だが、その燧ヶ岳と、山麓にたたずむ尾瀬沼は福島県と群馬県に位置している。
檜枝岐村には尾瀬への入山口が3つあり、沼山峠から「花の湿原」と称される大江湿原までは約40分という近さ。また、尾瀬国立公園のなかには会津駒ヶ岳も含まれており、この山への入山口があるもの檜枝岐村。福島県側の入山口は、バリエーションに富んだ尾瀬ハイク&登山を楽しめるのことが魅力といえるだろう。
■尾瀬はすぐそこ! 大江湿原まで徒歩40分!

尾瀬への入山口がある檜枝岐村は、南会津地方の福島県最西端に位置。尾瀬国立公園を挟んで群馬県と、只見川やダム湖の奥只見湖を県境に新潟県と接している。そして、尾瀬への入山口は御池、沼山峠、七入の3つ。マイカーや電車+バスでアクセスできるが、沼山峠だけは交通規制がされているため、御池からシャトルバスへの乗り換えが必要になる。


沼山峠は尾瀬沼までの距離が短く、約1時間10分の所要時間。ルート途中にある大江湿原まではわずか40分ほど行くことができる。「花の湿原」と呼ばれる大江湿原は、尾瀬にある湿原のなかでも高山植物の宝庫と言われ、初夏はワタスゲ、盛夏はニッコウキスゲが一面に咲き誇る。
そして、七入は徒歩で沼山峠に行くことができる道。実は「会津沼田街道」という尾瀬のなかでも古い道で、戦国時代後期に沼田城主の真田信之が群馬県の沼田城から福島県の会津若松を繋ぐルートとして整備されたのがはじまりだと伝えられている。いわゆる交易路として使われていた道なので、尾瀬ハイクで利用される機会は少ないが、古道好きなら興味をそそるかもしれない。

また、尾瀬沼は燧ヶ岳が崩れて川がせきとめられたことで誕生したと考えられおり、周囲は6kmほど。山に囲まれた穏やな湖沼は、燧ヶ岳が逆さに映る幻想的な景色を見ることができる。湖畔には山小屋やキャンプ場が点在し、泊まりの旅もおすすめだ。2021年にリニューアルした「尾瀬沼ビジターセンター」もあり、尾瀬の自然や歴史についての展示や、尾瀬の情報提供を行なっている。
■東北以北で最高峰の燧ヶ岳

御池は、日本百名山のひとつであり、東北以北の最高峰となる燧ヶ岳への入山口。また、只見川本流に懸かる三条の滝を目指すルートの起点のひとつでもある。
御池から燧ヶ岳への登山ルートは、途中に田代と呼ばれる湿原をいくつも越えていくのが特徴。広沢田代や熊沢田代などに高山植物が群生し、夏季はワタスゲやキンコウカが一面に咲いて圧巻ものだ。
また、燧ヶ岳は山頂の火口付近に5つの山がある連山で、このうち標高の高いものが爼嵓(まないたぐら)と柴安嵓(しばやすぐら)。見る方向によって山の形が違って見え、新潟から見るとこの2つのピークが際立ちきれいな双耳峰に見える。


東峰の俎嵓は標高2,346m。山頂には石祠があり、檜枝岐本村に祭られている燧ヶ岳神社の奥の院となっている。西峰の柴安嵓が標高2,356mあり、5つの峰の最高峰となる。
俎嵓の山頂からは眼下に尾瀬沼を一望でき、柴安嵓からは尾瀬ヶ原の広大な湿原とそのなかを貫く木道までしっかり見える。湿原の向こうには至仏山が鎮座し、尾瀬の眺めをまるごと楽しめる。


■檜枝岐村を囲む5名山を登頂クリアする「AROUND FIVE TOP」

尾瀬国立公園に含まれる会津駒ヶ岳も日本百名山のひとつ。檜枝岐村にある滝沢登山口がメインの入山口となり、森林限界を超えた山頂部は山地湿原の稜線が美しい天空の楽園のような場所だ。駒の小屋と駒ノ大池があるエリアはハクサンコザクラの名所で、例年であれば、7月中旬から下旬に見ごろを迎える。

檜枝岐村は燧ヶ岳や会津駒ヶ岳のほかに、帝釈山や台倉高山、大杉岳という5名山に囲まれている。村ではこの5つの山を登頂すると、「檜枝岐温泉観光協会加盟施設」で使える利用券(10,000円分)をプレゼントする「AROUND FIVE TOP」というイベントを企画。
GPSアプリを活用してルートを記録し、5名山登頂をクリアした後、「道の駅 尾瀬檜枝岐」にある檜枝岐村山旅案内所の受付で登頂記録を提示するというもの。イベント実施期間は2025年5月7日〜2026年10月31日だ。詳細は公式サイトをじっくりチェックしてみよう。