三寒四温を繰り返しながら春に向かっていた3月ですが、4月にかけて一気に暖かくなっていますね。

 この冬は久々に積雪に恵まれたおかげで、標高の高い山々には雪が多く残っています。雪山が作り出す造形のひとつに「雪庇(せっぴ)」があります。“東洋一の雪庇”で名を馳せた新潟県守門岳(すもんだけ)に登ってきました。

■守門岳と雪庇

遠くに見える守門岳の稜線。雪の残るこの季節、夏の入山口よりずっと下から歩かないといけません

 新潟県魚沼市の北東、長岡市や三条市とも接する稜線上にある守門岳は、袴岳を主峰として青雲岳、大岳との三峰からなる越後の名峰で、日本二百名山にも数えられています。樹齢約300年を超えるブナの原生林が広がり、比較的登山しやすい人気の山だけにいくつもの登山ルートが設けられています。

 主稜線に沿って発達した雪庇の規模が壮大なことでも有名で、雪山登山、山スキーの対象としても人気の山です。

 雪庇とは雪山の稜線、尾根に張り出した雪の庇(ひさし)のこと。風と雪の作り出す造形は荒々しく迫力がありつつも、春になれば消えていく儚さもあります。

 守門岳の稜線の雪庇が「例年以上の仕上がり」になっていると、SNSなどで話題になっていて気になっていました。豊富な積雪のおかげでしょう。そこで、晴天、風も穏やかな予報が出ているタイミングで守門岳に向かいました。

■姿が見えているだけに遠さを感じる守門岳

遠く見える山頂部。歩いた分だけ近づくのですが、まだまだ先……

 今回は夏山ルートとしても知られる二口登山口の手前、除雪の終点から歩き出しました。西川に沿い、まだしっかりと雪に覆われた田んぼの間を抜けるようにトレースが続いていました。吹き下ろす風はひんやりとしていますが、どこか柔らかな感触に春の訪れを感じます。尾根に取り付き森のなかへ。そこかしこから小鳥たちの囀りが聞こえるようになりました。

長峰から鞍部を経て山頂を目指します。背後に広がる越後平野もまだ白い世界

 長峰から緩く下った後、ふたたび緩やかな尾根をひたすら登っていきます。残りの標高差は700mあまり。見事なブナの森ではいっそう鳥たちの声が賑やかになり、ドラミングしているアカゲラも見ることができました。葉を落とした木々の枝にヤドリギの瑞々しさが目立ちます。

 徐々に森の密度が薄くなり、森林限界を迎えました。伸びやかに広がる雪の斜面が陽光を受けてまばゆいばかりに輝いています。すぐに白い小ピークが現れますが、目指す大岳はそのさらに先です。ときおり強めの風が吹き付けるものの概ね天気は良好で、振り返ると越後平野もまだ白い世界で雪の多さをあらためて実感します。