■私には「面白いな」と受け取れる器が必要だ

白山時代の同世代の二人と。それぞれの生き方をしてきた私たちが、山でこうして一緒に働いているのも奇跡というか、運命というか?!

 とはいえ、働く方も採用する方も、小屋に来て働き始めてみないとお互いわからないのが、山の仕事の難しいところだろう。相性だってある。

 毎年、各地の山小屋で働いている友人たちから、じつに振り幅のある四方山話が届く。

 「なにかと、すぐに同僚やお客さんと喧嘩をしてしまうバイトが来てね」

 「全然仕事はしないのに、権利だけ主張する大学生が……」

 「1食で2合も食べるスタッフがいて、次のヘリが飛ぶまで米禁止令が出て、芋ばっか食べてたよ」とか。

 朝起きたら、ドラム缶の上に小屋の鍵が置いてあって姿がなくなっていたとか、休暇明けに連絡が取れず戻ってこなかったとか、いわゆる逃げちゃった(逃げられちゃった)な話も無きにしも非ずです。

 山小屋には価値観や経験が様々な人達が集まるから、大変で、だから面白いんだけれど、毎年いろんなドラマがあるよね。管理人という立場で考えると、面白さだけではなくて、不安や心配も尽きない。たくさん食べる人は大歓迎だけど。

ネパールからきた同僚にスティックダンスを習うわたし

 北アルプスのある山小屋で、かれこれ20数年小屋を切り盛りしていた先輩は「毎年働く山小屋を替えて転々としている人も、気をつけた方がいい場合があるよ」と言っていた。私の立場だと即戦力になる! と歓迎したいんだけど、次もまた働いて欲しい人には、またお声がかかるものだからって。

 なるほど、毎年同じ小屋に呼ばれない理由がある、ともとれるか。採用って、難しい……。

やっぱりこの人、頼りになる高橋くん

 以前働いた小屋の支配人に、スタッフを選ぶ基準を聞いたことがある。「面白いかどうかだね」って答えが返ってきた。今ならわかる気がする。私には「面白いな」と受け取れる器が必要だ。同じ物事でも、自分がどう捉えられるか。本当にヤバい時もあるけれど、大抵のことは面白がれたらいい。