この夏は「ドッシャー、バッシャー」と容赦なく降るテカリらしい夕立が少なく、山も異常に暑い。例年山の夏は短く、Tシャツでいられるのなんて一週間くらいなものだが、今年はずいぶん長く着ている気がする。

 静高平の水はまだ出ない。山と高原の地図には「枯れることがあります」と書いてあるけれど、3年間でこんなに枯れっぱなしなのは初めてのこと。そろそろまとまった雨が降ってほしいが、台風は……被害がないと良いけれど……。

学生バイトのあやちゃんは10日間の夏休みを山で過ごした。最終日の水ボッカでこの笑顔

 小屋直下の水場は往復15分ほど下るが、めちゃくちゃ美味しい水がじゃんじゃん流れているから安心だ。行くか、行かないかはあなた次第! ひと言だけ言えるのは、水場から帰還した人はみんないい顔をしているってこと!

■高橋くんありきの光岳小屋です。ほんと。

「さて今日もはじめますか」配膳前の一コマ

 山小屋では、どんなに食材にこだわっておいしいものを提供したいと思っていても、それだけじゃうまい飯は食べられない。今回は、光岳小屋の食を支える重要なスタッフ、高橋くんの話であります。

 リニューアルした光岳小屋の1年目は鶏肉を焼きまくり、タイ仕込みのマッサマンカレーを毎日毎日丁寧に調理してくれた高橋くん。じつはこの方、和食もいけるんですよ。

 3年目となる今年の夕食は豚汁がメイン。夕食に使うキノコや米は、午前中のうちから準備し始める。お米は朝一番で、今日の予約人数と米の量を計算して浸水させる。毎日毎日同じことの繰り返し。だけど、「こんなもんでいいや」という半端な仕事は高橋くんの辞書にはない。「今日も、明日もおいしいものを作るんだ」という気持ちでやってくれる。その気持ちがありがたく、こういう小屋でありたいという目的に一緒に向かってくれるから心強い。

 最近のお米はあんまり研がなくてもいいって話を聞くけど、高橋くんはなんと88回も研ぐのがこだわり。それも毎日欠かさず。なぜ88回かって、そりゃあ、末広がりで縁起が良いから。本当にめでたい男である。でも、おかげでお米はツヤツヤでふっくら輝いて本当にうまく炊き上がるんだよな。

 夕食の配膳時に、ご飯を盛るのは私の担当だ。圧力鍋を開けて、ふんわりと香るお米の匂いを最初に味わえる一番いいポジションなのだ。