■苗場山(なえばさん・標高2,145m)

木道が整備され、ワタスゲの群生が湿原とコントラストをなし幻想的な苗場山山頂エリア

 苗場山は新潟県と長野県の県境に位置する標高2,145mの山だ。日本百名山の一座として名を連ねるほか、信州百名山や甲信越百名山にも選ばれている。

 山頂部は約600ヘクタールの広さがあり、これは東京ドーム約128個分に相当する。湿原になっており、大小の池塘が点在し、ここが本当に山頂なのかと思わせるような穏やかな場所だ。

 紹介するのは新潟県側から登るコースで、起点となるのが祓川登山口(はらいがわとざんぐち)だ。祓川登山口から苗場山までの往復の所要時間は約7時間50分。ロングコースのため、早朝の出発がマストとなる。余裕を持った行動に加え、天候や気温によっては降雪や凍結も考えられるため、滑り止めを携帯のうえ、天候に注意しながら計画してほしい。

広大なスキー場の中を通って登山道に入っていく

 冬季はスキー場として営業されているコース内を通り、登山道へと入っていく。序盤は鬱蒼とした樹林帯が続くが、木道が整備されている箇所が多く、比較的歩きやすい。

整備された木道を歩く。振り返ると絶景が広がる

 所々にベンチが設けられているため、適度に休憩をとりながら標高を上げていこう。

 祓川登山口から約3時間、苗場山の8合目でもある神楽ヶ峰(かぐらがみね)に到着する。この辺りは起伏が緩やかで歩きやすく、また神楽ヶ峰から20分ほどの所に雷清水(かみなりしみず)と呼ばれる水場がある。非常に冷たくておいしい水だ。

雷清水と呼ばれる水場。非常に冷たい

 雷清水を過ぎると急登になる。急ではあるが、段差の小さい階段が整備されているので歩きやすい。

 やがて平坦になると、そこはすでに山頂エリア。大小の池塘が点在し、湿原ではワタスゲが群生している。標高2,000mを超える山岳地帯であるはずが、穏やかすぎる湿原が広がる

 筆者が訪れた時は山頂付近がガスってしまい、視界がよくなかったが、天気がいい時は東京ドーム128個分の湿原が広がっている。湿原は散策できるよう木道が整備されているが、あまり遠くまで行ってしまうと、下山する登山道に戻るだけでもかなりの時間を要するので気をつけたい。

【祓川登山口ピストンコース】所要時間
祓川登山口 (0:25) →山頂駅(2:35) → 神楽ヶ峰 (1:20) → 苗場山 (1:15) → 神楽ヶ峰 (1:55) → 山頂駅(0:20)→ 祓川登山口
歩行距離:約13.6km
累積標高差:登り1239m 下り 1239m
合計所要時間:7時間44分

●【MAP】苗場山

■雪の季節の前に広大な頂上エリアの絶景を見に行こう

 11月にも入ると、高山では冠雪の便りが届くことも増えるだろう。山は下界よりも一足早く冬を迎え、静かになる。雪の季節が来る前に安心感に包まれる広大な大地の山へと出かけてみてはどうだろうか。