アユ釣りと聞くと、清流で長い竿を操る夏の釣りを思い浮かべる人が多いだろう。アユ釣りの代表的な友釣りは、生きたオトリアユを泳がせて野アユの縄張りに入れ、追い払おうとして体当たりしてきたアユの体に針を引っ掛ける釣法のこと。 

 アユの釣り方にはコロガシ釣り(エサを使わず、丸型オモリと複数の針がついた仕掛けを川底で転がしながら、魚を引っ掛けて釣る釣法)、毛ばり釣りなどさまざまなスタイルがあるが、近年、その縄張り意識をルアーで再現する「アユイング」という釣り方が注目を集めている。

 食わせるのではなく、怒らせて掛ける。その理屈を知ると、アユ釣りはぐっとおもしろくなる。

 アユイングはどこの川でも自由にできるわけではなく、禁止区域や友釣り専用区もあり、他の釣り人への配慮も欠かせない。それでも、「アユがルアーを追う」と聞いて不思議に感じた人ほど、この釣りの理屈を知ればきっと興味をひかれるはずだ。

 今回は30年以上、友釣りに親しんできた筆者の目線から、アユの習性と、その習性を利用した少し不思議な釣りの世界を見ていきたい。

■鮎は縄張りを持つ、少し変わった魚

岩盤の上で縄張りを意識して泳ぐ鮎たち。黄色く見える体色が縄張り意識の強い個体の特徴とされる

 アユという魚のおもしろさは、まずその習性にある。川の中でエサである良質のコケの領域を自分の縄張りとして持ち、その場所で食む。そこへ別のアユが入ってくると、追い払おうとするのである。

 実際に川をのぞくと、オイカワなどは群れで流れの中を行き来し、ヤマメやアマゴはエサが集まりやすい流れに着いていることが多い。一方でアユは、岩盤や石周りのコケ場で1尾ずつ少し間を空けながら位置を取っていることがある。

 これは良質なコケが付いた場所を意識し、縄張りを持っていることを示す行動のひとつで、橋の上などからでも見えることがある。友釣りもアユイングも、そんなアユの性質の上に成り立っているのだ。

■「食わせない、怒らせて掛ける」 友釣りとアユイングに共通する発想

波立ちのある瀬は、やる気のある鮎が着きやすいポイントのひとつ

 友釣りは日本独特の釣法として知られ、その始まりは江戸時代にさかのぼるとされる。ただし発祥地については諸説あり、狩野川などがそのひとつに挙げられている。

参照URL(https://www.mlit.go.jp/river/basic_info/jigyo_keikaku/gaiyou/seibi/pdf/11_kano_kyuu_ryuusui.pdf

 長い年月をかけて受け継がれてきたこの釣りが、アユの縄張り意識という習性の上に成り立っていると知ると、日本の川の釣り文化の奥深さも見えてくるのではないだろうか。

友釣りでは、掛かった鮎を一気に引き抜いて取り込むのが主流だ

 一方のアユイングは、専用ロッド、リール、アユ用ルアー、掛け針を使い、ルアーを下流から上らせるように見せて追い気を誘う。生きたアユを使う友釣り同様、ルアーでそれを演出し、縄張りに入ってきた相手を追い払おうとするアユの習性を利用する釣りなのである。

 ここが、アユイングを初めて知る人にとって最も意外で、同時におもしろいところ。アユがルアーを追う、と聞くと、最初はにわかに信じがたい。だが、アユが小魚を食べようとしているのではなく、縄張りに入ってきた相手を追い払おうとしていると考えれば、納得もいくというもの。

 新ジャンルという見方もあるが、アユの習性を別の形で見せてくれているとも考えられる。だからこそ、友釣りを知らない人にアユ釣りの世界を伝える入口としても、おもしろい切り口になることが多い。