日本百名山に数えられる、群馬県みなかみ町の谷川岳。複数の登山道からピークを目指せるが、ロープウェイを使って、天神尾根を登るルートが谷川岳デビューにぴったりだ。より安心・安全に登山をするのなら山岳ガイドと一緒に登るのがおすすめ。そこで今回は、「みなかみ山岳ガイド協会」所属ガイドと一緒に山頂を目指した。

■トマの耳とオキの耳、双耳峰の谷川岳登山に挑戦!

ブナ林を眼下に眺めながらロープウェイで約15分の空中散歩

 今回、登山をする東海林航汰さんは、アウトドアメーカーに勤める会社員。登山や釣りを楽しんでいるが、谷川岳に登るのははじめてだという。

 そんな彼を案内してくれるのが、みなかみ山岳ガイド協会に所属する手嶋常久さんだ。谷川岳をはじめ、北アルプスや上信越で活動し、登山、沢登りなどのガイドを担当。冬季は谷川岳天神平スキー場の雪崩講習も行なっているという、谷川岳を知りつくした頼れる存在だ。「町のシンボルでもある谷川岳は自分としても思い入れがある山」だというから、案内が楽しみだ。

「みなかみ山岳ガイド協会」をチェック
猫耳のような2つのピークをもつ谷川岳。天候がよく山の全容が見ることができた

 さっそく、谷川岳ロープウェイに乗って、登山口を目指す。谷川岳は雪深い過酷なエリアとあって、ロープウェイは強風に強いフニテル式。2本のワイヤーロープで搬器を固定するタイプで、国内ではフニテル式は3か所しかないという。このうち、谷川岳ロープウェイが最長を誇る全長2,400mのものなのだとか。

 ロープウェイ山頂に着くと、目の前にドーンと双耳峰の谷川岳が見えた。ここから天神尾根を通って山頂を目指すのだ。

谷川岳ロープウェイ

■今回はペアリフトに乗って展望を満喫

ペアリフトに乗って展望台を目指す

 普段、手嶋さんはロープウェイ山頂からそのまま登山口に入るというが、今回は天気もいいのでペアリフトに乗って、展望台からの景色を眺めにいくことに。また、山頂部には天満宮が祀られている。

険しい雄姿に目を奪われる谷川岳
リフト山頂は標高1,500m。ここから遠くにそびえる谷川岳へと向かう

 展望台まで上がると、そこは360度のパノラマビュー。谷川連峰をはじめ、武尊山や赤城山など群馬県の代表的な山、眼下に見えるみなかみ町、さらに白毛門、笠ヶ岳、朝日岳など谷川連峰をUの字に縦走する馬蹄形ルートなど、手嶋さんが見える景色を説明してくれる。

 展望台の眺望を楽しんだら、いよいよ谷川岳登山にスタートだ。

■ガイドが歩き方をアドバイス

岩の斜めになったところではなく平らなところに足を置くと滑りにくい

 まずここからの行程は、リフト山頂からしばらく下り、ロープウェイ山頂からのルートに合流するというもの。下り道、岩場を歩くときは「岩に足を置くと滑るので、平らなところに足を置くこと」と、さっそくアドバイス。

 「段差の大きなところは手も使って、体を支えて」などと、見本を見せながら先導してくれる。

手嶋さんの後について、鎖のある岩場をトラバース

 ロープウェイ山頂から登ってくる道と合流すると、しばらく山の斜面を横移動するような道が続く。斜面には鎖場をトラバースする場所もある。無理に鎖をつかまなくても良いが、バランスを崩しそうなら「山側に手をついて歩くと安全」と教えてくれた。

山の中でも目立つ、全体が真っ赤に塗られた熊穴沢避難小屋

 ゆっくり標高を上げながら歩き、「熊穴沢避難小屋」で小休憩をとる。谷川岳は豪雪地帯としても知られ、冬はこの小屋の屋根あたりまで雪が積もるという。

小屋の近くで見かけたブナの実。とげとげの実の中に細長い種が入っているという

 小屋のそばに木の実がなっていた。「これはブナの実」だと手嶋さんが教えてくれる。ブナは保水力が高いと言われるが、その理由は、「落ち葉が積み重なってスポンジ状になり、それがたっぷり水を吸うから」なのだとか。

 ブナの木が山に水をためこみ、その水が湧き水となって利根川の流れとなり、関東平野を抜けて太平洋へと注いでいくのだ。