日本百名山に数えられる、群馬県みなかみ町の谷川岳。複数の登山道からピークを目指せるが、ロープウェイを使って、天神尾根を登るルートが谷川岳デビューにぴったりだ。より安心・安全に登山をするのなら山岳ガイドと一緒に登るのがおすすめ。そこで今回は、「みなかみ山岳ガイド協会」所属ガイドと一緒に山頂を目指した。
■トマの耳とオキの耳、双耳峰の谷川岳登山に挑戦!
今回、登山をする東海林航汰さんは、アウトドアメーカーに勤める会社員。登山や釣りを楽しんでいるが、谷川岳に登るのははじめてだという。
そんな彼を案内してくれるのが、みなかみ山岳ガイド協会に所属する手嶋常久さんだ。谷川岳をはじめ、北アルプスや上信越で活動し、登山、沢登りなどのガイドを担当。冬季は谷川岳天神平スキー場の雪崩講習も行なっているという、谷川岳を知りつくした頼れる存在だ。「町のシンボルでもある谷川岳は自分としても思い入れがある山」だというから、案内が楽しみだ。
さっそく、谷川岳ロープウェイに乗って、登山口を目指す。谷川岳は雪深い過酷なエリアとあって、ロープウェイは強風に強いフニテル式。2本のワイヤーロープで搬器を固定するタイプで、国内ではフニテル式は3か所しかないという。このうち、谷川岳ロープウェイが最長を誇る全長2,400mのものなのだとか。
ロープウェイ山頂に着くと、目の前にドーンと双耳峰の谷川岳が見えた。ここから天神尾根を通って山頂を目指すのだ。
■今回はペアリフトに乗って展望を満喫
普段、手嶋さんはロープウェイ山頂からそのまま登山口に入るというが、今回は天気もいいのでペアリフトに乗って、展望台からの景色を眺めにいくことに。また、山頂部には天満宮が祀られている。
展望台まで上がると、そこは360度のパノラマビュー。谷川連峰をはじめ、武尊山や赤城山など群馬県の代表的な山、眼下に見えるみなかみ町、さらに白毛門、笠ヶ岳、朝日岳など谷川連峰をUの字に縦走する馬蹄形ルートなど、手嶋さんが見える景色を説明してくれる。
展望台の眺望を楽しんだら、いよいよ谷川岳登山にスタートだ。
■ガイドが歩き方をアドバイス
まずここからの行程は、リフト山頂からしばらく下り、ロープウェイ山頂からのルートに合流するというもの。下り道、岩場を歩くときは「岩に足を置くと滑るので、平らなところに足を置くこと」と、さっそくアドバイス。
「段差の大きなところは手も使って、体を支えて」などと、見本を見せながら先導してくれる。
ロープウェイ山頂から登ってくる道と合流すると、しばらく山の斜面を横移動するような道が続く。斜面には鎖場をトラバースする場所もある。無理に鎖をつかまなくても良いが、バランスを崩しそうなら「山側に手をついて歩くと安全」と教えてくれた。
ゆっくり標高を上げながら歩き、「熊穴沢避難小屋」で小休憩をとる。谷川岳は豪雪地帯としても知られ、冬はこの小屋の屋根あたりまで雪が積もるという。
小屋のそばに木の実がなっていた。「これはブナの実」だと手嶋さんが教えてくれる。ブナは保水力が高いと言われるが、その理由は、「落ち葉が積み重なってスポンジ状になり、それがたっぷり水を吸うから」なのだとか。
ブナの木が山に水をためこみ、その水が湧き水となって利根川の流れとなり、関東平野を抜けて太平洋へと注いでいくのだ。