群馬県のみなかみ町は、県最北端にあたる地域。日本を代表する大河川である利根川の最上流域に位置し、川の水源があるのがこの町だ。山から流れる水が森林を育て、田畑を潤し、里山で暮らす人々の生活を支えてきた。そして、山や川のアウトドアアクティビティ、温泉やグルメなどの観光産業も、水の恵みにつながっている。そんな、利根川の恵みと暮らしが結びついたみなかみ町の魅力を、「水」というテーマからひも解いていきたい。
■みなかみ町から利根川の最初の一滴が生まれる
「万葉集」にもその名が見られる利根川は、古くから日本一の河川の長男として「坂東太郎」の名称で親しまれてきた。日本一の広さを誇り、国内で2番目に長い利根川の水源は、みなかみ町と新潟県の県境にある大水上山。この山の最初の一滴が、川の流れとなり、いくつもの支流の水を集めて、群馬県、茨城県、栃木県、埼玉県、千葉県および東京都の1都5県を通って太平洋に流れていく。首都・東京をはじめ、3000万人の暮らしを支える最初のひとしずくは、みなかみ町の山から生まれるのだ。
■夏は、川や湖のウォーターアクティビティが人気
山も川もあるみなかみ町は、豊かな自然を生かし、登山やハイキング、ウォーターアクティビティ、冬はスキー・スノーボード、スノーシューなどのアウトドアスポーツが盛んな地でもある。
特に夏場は、清涼感を味わえる川や湖でのウォーターアクティビティが人気。利根川をはじめとする河川では、ラフティングやキャニオニングのような、スリルと爽快感抜群のリバーアクティビティを満喫できる。自然に癒されながらゆったり過ごしたければ、湖でカヌーやカヤック、SUPなどのアクティビティも体験可能だ。
■町を代表する山「谷川岳」
みなかみ町を代表する山といえば、日本百名山のひとつに数えられる谷川岳。新潟県との県境に、谷川岳をはじめとする谷川連峰の山並みが連なり、この山域が日本海と太平洋の分水嶺になっている。冬は日本海から流れる雪雲が山にぶつかり、たくさんの雪を降らせる豪雪地として知られる。その雪が解けた沢水を集めた湯檜曽川(ゆびそがわ)は、利根川に流れ込む支流のひとつだ。
谷川岳は、北と南に「トマノ耳」と「オキノ耳」という2つのピークをもつ双耳峰。山麓のみなかみ町から見ると、猫の耳を立てたように峰が並んでいるのがよくわかる。また、標高2,000mに満たないのにもかかわらず、荒々しい岩場や氷河の影響を受けた痕跡が見られる希少な山で、3,000m級の山が揃ったアルプスに生息するような高山植物も見つけられる。山麓の上越線・土合駅から登山口が整備されているが、谷川岳ロープウェイを利用すると少ない高低差で登頂できる。
■日本屈指の岩壁「一ノ倉沢」
谷川岳は、新潟県側が緩やかな斜面になっているのに対し、みなかみ町がある群馬県側は峻険な岩壁になっている独特な地形。その様子がよく分かるのが、谷川岳山麓の「一ノ倉沢」だ。日本三大岩場のひとつと言われるこの大岩壁は、ロッククライミングの聖地としても有名。土合駅や谷川岳ロープウェイ山麓から歩いて一ノ倉沢を見に行くことができ、ブナ林の道を抜けるといきなり視界が開け、切れ落ちた岸壁の迫力を間近で感じることができる。
谷川岳から流れ出てきた沢水は、湯檜曾川に注ぎ、やがて利根川と合流する。そして、太平洋まで流れていくことを考えると感慨深いものがある。