■遭難エリアは分散

山系別遭難発生状況(遭難したエリア)。富士山0件、御坂山系2件(鍵掛峠、黒岳)、南アルプス2件(鷲ノ住山、甲斐駒ヶ岳)、八ヶ岳2件(牛首山、赤岳)、秩父山系3件(鶏冠山、東沢渓谷、七ツ石山)、大菩薩・道志3件(御前山、今川峠、笹子峠)『山梨県警発表、2023年1月1日~2月28日』

 全体的に遭難の起きた山は分散したようである。山梨県の東側の東京に近い雪の少ないエリアと、雪を求めて高山帯(南ア、八ヶ岳、秩父)への入山の結果であると思われる。県内では比較的少ない「雪崩」遭難が1月に八ヶ岳で起きている。過去に雪崩が起きた記録が無い山でも、斜面の上に不安定な積雪があれば雪崩る可能性はありうる。積雪期の登山を続けていく方は、雪崩の講習会などに参加して、知識と経験を増やしていくことをおすすめしたい。

■単独の登山者は6割強

単独か複数か(グループ人数)【1月:単独5名、複数2名】【2月:単独3名、複数2名】『山梨県警発表、2023年1月1日~2月28日』

 単独の登山者が多く、その性別は全員男性である。遭難の結果を見てみよう。

・単独8名:死亡3名、重傷2名、軽傷1名、無事救助2名
・複数4名:重傷3名、無事救助1名

 単独の登山者は結末がシビアだと言われているが、特に冬季は1人で救助を待つ間に低温にさらされることも状況の悪化に拍車をかける。単独登山者のうち、無事救助されている2名の原因は「道迷い」であり、「滑落、転倒」すると結果が悪くなるのがみてとれる。「滑落、転倒」は不意に起きるもので完全には避けられないが、焦って気持ちの余裕がなくなるとおかしな行動をしがちだ。入山前にできる自分への安全対策は時間の余裕をもった行程作りではないだろうか。

 早い桜が咲き、心も軽やかに、春の登山を楽しみにしている方も多いだろう。街はどんどん春がすすみ暖かい装いに変わっていくが、山の上はGW付近まではまだまだ低温で、日陰には雪や氷が残り、突如吹雪くこともある。登る山の標高と登山道の方位を調べて登山計画をたててみてはいかがでしょう。どうぞご安全に。