登山シーズンも佳境、標高の高いところでは冷え込みも厳しくなってきており、すでに秋山へと移行しつつある。
登山の計画を立てる際、タイムスケジュールを管理するときに参考にするのがコースタイムだ。「何を基準に設定しているのだろう? 誰が歩いているの? 荷物の重さで違うでしょ?」そんな疑問が湧いてくる。
登山を始めたばかり、または一般的な登山者に向けて、ガイド山行中に気にしている事項を元に歩行時間と行動時間、休憩について説明していきたい。
■「誰が歩いた場合?」コースタイムの基準を知りたい
コースタイムが記載されている登山用の地図で利用者が一番多いのは、昭文社『山と高原地図』シリーズだろう。全国の主要な山域の登山ルートを網羅している。登りたい山があれば、まずは参考にしたい登山地図の代表格だ。
ここでは地図上に記載されているコースタイムについて、『40〜50歳の登山経験者で2〜5名のパーティー、山小屋利用前提の装備・夏山の晴天時」など、年齢や熟練度、人数や装備などの設定条件が明記されている。つまり、「初心者の単独ではなく、テント泊装備ではなく、悪天候でもない夏道」ということだ。
実際に歩いた際のデータを基準にしているというが、(同時に記載されているが)あくまでも目安であり状況等によって相当な差異が発生する可能性がある。ただ僕の経験上、無理のないコースタイム設定のルートがほとんどで、ガイド山行においても非常に参考になっている。
他のガイドブックについても同様で、コースタイム設定の条件がどこか(分かりづらいことが多い)に記載されているはずである。
最近の注目は、著しく進化するスマホなどのデジタル機器の“地図アプリ”のコースタイム。一般の登山者のデータが反映されたりするようにもなってきた。登山記録でも「平均」「やや速い」などの情報が表示されているものあるので、参考になるツールとして役立てることができるだろう。
■コースタイムからイメージ!
一般的な傾斜の登山道では、1時間あたり標高差300mを上げるのが一つの目安。ただし、高標高になればそれだけハードだし、後半戦はペースダウンするのが通常だ。また、歩き出し(休憩後も)はゆっくりとしたペースで歩くと負担が少ない。当然暑い中では熱中症予防の観点からもゆっくりと無理をしないペースで歩きたい。
同ルートを上り下りする場合は、下りは上りの2/3程度の時間となることが多い。上りも下りも大差ないようなコースタイムなら比較的なだらかな登山道かもしれない。ただし、通常の傾斜でも下りで滑りやすくて時間がかかってしまう場合もある。詳細は地形図と合わせて判断しよう。
等高線が詰まり切った(表現しきれないような)急激なアップダウン、さらにペースダウンせざるを得ない危険箇所や歩きにくい登山道状況では当然コースタイムが(地図上の)水平距離に対して長くなる。逆に言うと、コースタイムから難所の可能性を判断することも可能だ。
■歩行時間と行動時間は違う
登山地図に記載されているコースタイムやガイドブックに書かれている歩行時間は、休憩時間を含めていない。実際の山行では休憩を取るので、歩行時間に休憩時間を加えた行動時間が歩き出してから下山するまでの時間となる(山小屋やテントなどの山中泊の場合は1日の行動時間)。さらに、人気ルートは混雑して渋滞することも多い。実際の山行ではその辺りも加味して行動計画を立てよう。
行動時間=必要な時間は、当然休憩をどの程度取るかによって異なってくる。そして、休憩の取り方は山行自体の成否を方向づける大きな要素でもある。