■低血糖になった原因

急登は運動強度が高くなりやすい。楽に感じるペースで登ろう(撮影:fudo2020

 運動中に低血糖になる基本的な原因は下記の3つ。

(1)体内の糖質を大きく消費する=強度の高い運動を長時間行う
(2)元々、体内にある糖質が少ない=事前に適切な食事をとらない
(3)糖質が補給されない=運動中に補給しない

 このうち筆者に当てはまったのは、(1)と(3)だ。

■主観的運動強度とエネルギー源の関係

強度の高い運動を行うほど、糖質の消費割合が増える(図作成:fudo2020

 主観的運動強度とは運動を行う本人が感じる運動強度のことで、消費されるエネルギー源に関係する。運動時の強度を「非常に楽である、かなり楽である、楽である、ややきつい、きつい、かなりきつい、非常にきつい」の7段階に分けて評価する。(なお、この評価法はあくまで個人の感覚が頼りのため、より正確に知りたい場合は、心拍数から主観的運動強度を求める方法もある)

 この主観的運動強度が高いと糖質を多く消費し、低いと脂質を多く消費する。全体的なエネルギー消費量は同じだが、主観的運動強度の強弱で、どちらのエネルギー源が多く配分されるかが決まる。

 例えば、Aさんが富士山の山頂まで登るとしよう。消費されるエネルギーは(1)楽であると感じて登る場合、脂質2000kcal+糖質2000kcalとなり、(2)きついと感じて登る場合は、脂質1000kcal+糖質3000kcalとなる。これはあくまで例だが、主観的運動強度を下げることで、糖質の消費を抑えられる。ヒヤリ体験時は、筆者にとって5段階目「きつい」~6段階目「かなりきつい」運動を続けていたため、割合として糖質が多く消費されたことになる。

 一般の登山においては、5時間以上行動することも少なくない。前述のとおり、糖質の貯蔵量は限られているため、できるだけ脂質を使えるよう「楽である」と感じる強度で運動しよう。よく言われるのは「会話しながらでも呼吸が乱れない」強度だ。

 登山の主観的運動強度は、歩き方やペース、荷物量などによって増減させられる。いつもの登山で「きつい」と感じる方は、これらの見直しを検討してみよう。登山の場合、斜度や路面の状況、天候なども複雑に絡み合う。一筋縄ではいかないが、書籍を読んだり、登山ガイドが開催する講座に参加したりして着実に経験を積めば、どのような状況でも運動強度をコントロールしながら、計画通り行動できるようになるだろう。