■「疲れて動けない」の正体は、低血糖

低血糖になると身体に力が入らない(撮影:fudo2020

 低血糖とは、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が低くなった状態のことで、ハンガーノックとも呼ばれる。自動車でいう、いわゆるガス欠だ。

 人間の燃料は主に糖質と脂質の2つだが、脂質は多く貯蔵でき、ほとんど不足することはない。対する糖質は体内に貯蔵できる量は多くても2000kcal程度。これは一般的な登山5時間で消費されるエネルギーと同等だ。脂質があれば問題なさそうだが、脳は「偏食家」でグルコース(糖質)しか受け付けず、糖質が不足するとさまざまな症状が出現する。

 初期症状は、「冷や汗、不快感、強い空腹感、寒気、動悸、手足のふるえ、目のちらつき、ふらつき、力のぬけた感じ、頭痛」など。重度になると「めまいや錯乱、幻覚、昏睡」などがあり、最悪の場合、死に至る。

 2度のヒヤリ体験時は、最終的に初期の低血糖になっていた。出発時は快調だったが、動けなくなったときには不快感や動悸、少しのふらつきなどがあった。なかでも力のぬけた感じはよく覚えている。貧血の症状にも似ているが、立ちくらみはなかった。

 ちなみに、低血糖で怖いのは、人によって初期症状をあまり自覚できず、気づいたときには重度になっている可能性もある点だ。筆者の場合は、無知や過信も合わさって、最後まで「たいしたことないだろう」と他の症状を無視していた。

 疲労感や各種の症状は、身体の警報。「なにかちょっとおかしいな」と感じたら、「これぐらい大丈夫だろう」と見逃さず、少し冷静になって身体の健康を観察したい。早期に発見できれば、その分リカバリーもしやすい。