■登山中の補給戦略

登山では多くのエネルギー源が消費される(撮影:fudo2020

 登山中に消費されるエネルギー量は、運動時間と自身の体重から推定できる。具体的には下記の式で算出する。

消費エネルギー量(単位:kcal)=6.5(※登山の運動強度係数:荷物の重量やペースなどによって変わる)×運動時間(単位:時間)×体重(単位:kg)

 計算すると、1度目のヒヤリ体験時に消費されたエネルギー量は、約2000kcalだった。当日はほとんど補給しなかったので、体内に元々あった糖質を2000kcalと多く仮定しても、それを使い切ってしまい低血糖に陥ったのだ。このとき、主観的運動強度が低ければ、脂質も使えたはずだが、筆者にとって強度のかなり高い運動だったため、脂質はほとんど使われなかったと推測する。

 補給は少なくとも1時間おきに、糖質主体の食品を摂取するのがよい。強度の高い運動を行っているときは、エネルギーに変換されやすいブドウ糖主体のジェルなどがいいだろう。ヒヤリ体験時の筆者は、1時間おきに約120kcalのジェルを3つ摂取するべきだった。おにぎりに換算すると2つだが、これは食欲的に現実的でない。強度の高い運動を長時間行う場合、必要な補給量はかなり多いことがわかる。

 一般の登山の場合は、脂質を30%使えると仮定して、補給すべき糖質は1時間おきに100kcal程度でよいだろう。2時間の間に、おにぎり1つ食べればいい計算になる。なお、これは個人差があるのであくまで目安としてほしい。消化の時間やエネルギーへ変換する時間があるので、できるだけこまめな補給を心掛けよう。ただ、登山は競技ではないのであまり深く考えず、好みのものを摂取すればよい。計算した量よりも少し多めに用意すれば安心だ。

 ちなみに運動中は汗によって水分や電解質が排出される。これらの補給にはスポーツドリンクや電解質の入ったタブレットなどが便利。電解質が不足すると、身体の反応が鈍くなったり、ときには足がつってしまったりするので注意が必要だ。