■念願の“3里上流の滝”へ行く

 装備一式を担いで、のんびりと自転車でスタート地点へと帰っていく。

 以前は大荷物を担いで必死でバスに乗り込んだものだが、パックラフトになってからというもの本当に単独行が楽になった。

人力移動の方が感じられる世界の幅が広がる

 車を回収したら、そのまま目指すは海部川の源流域。12年前に、地元のおばあちゃんにおすすめの滝があると聞き、場所を尋ねたら「3里上流じゃ」と言われて衝撃が走った、あの滝である。当時は台風による道の崩落で行くことができなかったので、じつに12年越しのリベンジマッチとなった。

 滝の名前は「轟の滝」といい、日本の滝百選にも選ばれている四国一の大滝だ。ただでさえ来るのが大変な海部川のさらに奥地にあるため、勇名は轟けど訪れる人はそんなに多くはない。そういう場所、個人的には大好物である。

 断崖絶壁に囲まれ、深く切り立った渓谷を歩いていくと轟本滝神社が現れる。鳥居をくぐると、途端に体に冷気がまとわりつき、何やら神域に迷い込んだかのような不思議な感覚になる。

 渓谷の奥からは轟々という音が聞こえるが、両岸から崖が迫ってその姿は確認できない。滝壺付近まで行って、崖の隙間から初めてその神々しい滝の姿が拝めるのだ。

この迫力は写真じゃ伝わらない

 ご神体として祀られているだけあって、パワースポット感が半端ない。直前まで見えないのに、いきなり落差58mの滝が出てくるから、昔の人はさぞや驚いたことだろう。

 ここは他にも大小さまざまな滝が連続してあるため、それらを総称して轟九十九滝と呼ばれている。山全体が滝の回廊のようになっており、最上部にある鍋割の滝まではおよそ1,500m。そこに行くための遊歩道が整備されており、2時間もあれば往復が可能だ。

 時間に余裕があれば、ぜひチャレンジしてみてほしい。