■ディープリラックスの世界にようこそ
この川だからこその楽しみは、“ダイレクトウォーターで飯を食う”ということだ。
ミネラルウォーターと同等、もしくはそれ以上のCOD数値(有機物による水質汚濁の指標)を叩き出した川なので、文字通り川の水をそのまま調理に使うことができる。
※天然水のため微生物が含まれている可能性あり。気にする人は浄水器を持っていこう。
飯を食うだけ食ったら、ドザエモン的に大の字で昼寝しなくてはいけないのが我が川旅の絶対ルールだ。昼寝のない川旅なんて、出汁の入ってない味噌汁のように味気ないものだと僕は思っている。
石のゴツゴツ、川のせせらぎ、緑のゆらめき、空の青、トンビの鳴き声を五感で感じながらウトウトしていく。その瞬間には、この世の快楽の全てが詰まっているとさえ感じるのだ。頬を撫でる午後の風で自然と目を覚ましたら、川のクリアウォーターで顔を洗って頭をキリッとさせる。再び川の人となり、何も考えず、ただゆらゆらと流されていく。
これ以上の幸せがあるのなら教えてほしい。
この川の流域は日本の自殺最希少地域で、その謎の解明については岡檀著『生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある』にて、多くが語られている。(前編参照)
自殺率が低いことにはさまざまな理由があったが、個人的にはこの川の美しさも一つの要因なんじゃないかと思った。
この川がもたらす癒しの効果は、僕自身が体感してよくわかっているからだ。
ゴールの川原に到着すると、地元の若夫婦が赤ちゃんを川で沐浴させている光景に出会った。良い川周辺の人たちは、自然な形で川と共生し、そして目に見えない癒しの恩恵を得ている。
「ここが好きなんです。私たちも、この子も」
そう言って、ニコッと笑う親子の顔が今でも目に焼きついている。
12年前、地元の人に「いい川ですね」といった時、自分が誉められたかのように嬉しそうにしていたおばあちゃん達の笑顔と重なる。とても嬉しく、微笑ましい気持ちになった。きっと僕もその時、同じような顔で笑い返していたように思う。
こうして“確かなもの”というのは受け継がれていくのだろう。