「いつかは愛犬・マリィと岩木山(いわきさん)を歩いてみたい」 今回の登山の始まりはそんな何気ない思いつきからだった。
筆者はこれまで、八甲田山、蔵王、岩木山、八幡平、東京都の三頭山など登山経験はそれなりにあるが、いきなり愛犬と岩木山に行くのは無理がある。人間だけでも大変なのに、「疲れた」と言葉で伝えられない犬連れとなれば話は別だ。
そこでまずは実際に歩いて確認してみる必要があると感じ、今回青森県むつ市にある釜臥山(かまぶせやま)をセレクトした。
釜臥山は標高878mで下北半島を代表する山の一つ。山頂付近からは陸奥湾や津軽海峡を望むことができる。また、夜景スポットとしても知られている。今回は犬と一緒に山に登ることの練習を目的としていたため、登山ルートではなく、見通しが良く引き返しやすいスキー場ゲレンデルートを選択した。
一緒に歩いたのは、2歳の豆柴・マリィ。体格は痩せ型で、普段の散歩でも1日2回、30〜40分以上歩くことが多い。まだ若いこともあり少々の運動はまったく苦にしない、とにかく元気な愛犬だ。
■最初はのんびり…… のつもりだったのだが
5月、春のスキー場は静かで、風も気持ちいい。まだ少し雪の残る場所もあり、下北の春らしい景色が広がっていた。今回は釜臥山スキー場近くの駐車スペースを利用し、ゲレンデ下部から歩き始めた。
マリィはやる気満々だ。こちらが準備している間も、「早く行こう」と言わんばかりに前へ前へと出ていく。普段の散歩でもそうだが、犬は“遊び”になると急にテンションが上がるようだ。しかも今回は山だ。マリィにとっては、いつもの散歩よりずっと刺激的なのだろう。最初は登山道というより、ちょっと長めの散歩に近い感覚で、余裕があった。
■犬連れ登山は自分のペースで歩けない
ところが、歩き始めて15分ほどで状況が一変した。見た目は緩斜面であったが、太ももがじわじわ重くなってきた。普段の散歩は平地が中心。多少アップダウンのある公園は歩いているが、登山の斜面は負荷のかかり方が違う。
特に斜度のある登りを休みなく歩き続ける時間はきつく、一歩の負担は小さいが、やがて蓄積され大きな疲労へとつながった。
さらに今回は、人間だけの登山と違うため自分のペースを作りにくい。一人のときは、「少し呼吸が上がってきたからペースを落とそう」「ここで一回休もう」と自由に調整できる。しかし今回は、マリィがどんどん前へ進んでいくため、こちらの息が思った以上に早く上がってしまった。
「犬連れ登山で怖いのは、犬のペースに人間が引っ張られること」 ここで初めて、その意味を実感した。