入笠山(にゅうかさやま)は、長野県富士見町に位置する標高1,955mの山である。南アルプス最北端にあり、山頂からは八ヶ岳や南アルプス、中央アルプス、北アルプスまで望める360度の展望が魅力だ。

 富士見パノラマリゾートのゴンドラを利用すれば、手軽に高原散策を楽しめる。だが今回は筆者が実際に歩いた沢入(そうり)登山口から山頂を目指すコースを紹介したい。標高差は約640m、距離は約8.6km。静かな森林歩きから入笠湿原、お花畑、山頂の大展望まで変化に富み、歩きごたえ十分のコースである。

 夏の入笠山は花の季節だ。ヤナギラン、サワギキョウ、クサレダマ、マツムシソウなど多彩な花々が咲き、運が良ければ「森の妖精」と呼ばれるレンゲショウマにも出会える。花の百名山らしい魅力を味わえる一座である。

沢入登山口から入笠山とアカノラ山を巡るコース(国土地理院地図より引用)

●沢入登山口へのアクセス

 今回の起点は沢入登山口である。マイカーの場合は、中央自動車道・諏訪南ICから富士見パノラマリゾート方面へ向かい、沢入登山口駐車場を目指す。駐車台数は40台前後と限られており、特に花の時期や週末は早朝から混雑しやすい。早めの到着を心がけよう。

 公共交通機関を利用する場合は、JR中央本線・富士見駅から富士見パノラマリゾート方面へ向かい、ゴンドラを利用して入笠湿原や山頂方面へアクセスする方法が一般的だ。今回はゴンドラ利用ではなく沢入登山口から歩くルートだが、入笠山はアクセス方法によって体力や時間に合わせた楽しみ方ができる点も魅力だ。

【沢入登山口から入笠山縦走コース】所要時間
沢入登山口(0:00)→ 山彦荘(1:00)→ ヒュッテ入笠(1:15)→ 入笠山山頂(1:30)→ 山彦荘(3:00)→ アカノラ山(3:15)→ 沢入登山口(4:40)
歩行距離:約8.6km
累積標高差:登り 640m、下り 640m
合計所要時間:4時間40分

■静かな森を抜けて花の湿原へ! 沢入登山口からヒュッテ入笠へ

整備された木道に沿って湿原を歩いていく

 沢入登山口を出発し、まずは山彦荘(やまびこそう)を目指す。登山道は樹林帯の中を進む静けさで包まれていて、序盤から入笠山の自然をじっくり味わえる。笹に囲まれた道や、木漏れ日の差し込む森を歩く時間は、ゴンドラ利用では味わえない魅力だ。

 沢入登山口から山彦荘までは約1時間。山彦荘周辺に着くと視界が開け、入笠湿原の雰囲気が一気に広がる。木道の周囲には夏の草花が咲き、湿原らしいやわらかな景色が続く。

 さらに15分ほど進むとヒュッテ入笠に到着する。旧マナスル山荘として親しまれてきた山小屋で、入笠山登山の休憩拠点として利用しやすい。食事や喫茶を目的に訪れるハイカーも多く、お花見散策の途中でひと息つくのにもよい場所だ。

■夏の花々に迎えられ、360度展望の入笠山山頂へ

ヒュッテ入笠で休息を取ったら、いよいよ入笠山山頂へと進む

 ヒュッテ入笠周辺から御所平峠(ごしょだいらとうげ)を経て、入笠山山頂へ向かう。ここから山頂までは20〜25分。短い区間ではあるが、最後は登り応えのある急登もあるので、山頂が近づくにつれて高揚感がある。

 登山道脇には夏の花々が咲いていて、つい足が止まりがちになる。青紫色のサワギキョウ、黄色いクサレダマ、淡い紫のマツムシソウ、鮮やかなヤナギランなど、花の百名山らしい景色が次々と現れる。

 辿り着いた入笠山山頂は広く開けており、天候に恵まれれば八ヶ岳、南アルプス、中央アルプス、北アルプスまで見渡せる。筆者が訪れた日は雲が多かったが、青空がのぞく瞬間もあり、高原らしい爽快な空気を感じられた。