山は人と様々な関わりを持っている。信仰、芸術、そして生活。
そんな山の様々な顔は東京都心部でも見ることができる。都心で登山? と不思議に思われるかもしれないが、実は東京都23区内にも色々な山が存在している。郊外の大自然で非日常感を味わう登山とはまた違った面白さを体感できるだけでなく、昨今話題のクマとばったり遭遇というアクシデントも避けられる。
夏場の日中はヒートアイランド現象で外を歩くのが危険な都心も、冬場の日中なら有酸素運動が快適である。何かとメリットの多い真冬の街歩きハイキングで都内の“超”低山を巡る様子をレポートする。記事では3つの山を訪れているが、あなたはいくつご存じだろうか?
■最初に目指すのは三角点がある「都内最低峰」
浅草駅で待ち合わせた筆者と知人が最初に向かったのは待乳山(まつちやま・標高9.7)だ。待乳山聖天(まつちやましょうでん)と聞けばピンとくる方もいるかもしれない。
大根をお供えする独特のお参り、そして小説家・池波正太郎生誕の地であることを示す碑も至近にあり、時代小説ファンにとっても有名なスポットだ。
そんな待乳山には三角点のある都内最低峰という顔もある。国土地理院の地図によると標高は9.7m。境内にはお線香の香りが漂い、参拝者の姿がたくさん。東京の登山者にとっても馴染み深い高尾山薬王院に雰囲気が似ている。
とはいえ山らしい雰囲気はなく、当然ながら訪れる人達の目的はお参り。多くの人が境内で販売している大根を購入して本殿へ入っていく。三角点を目当てに訪れた筆者は本殿へは入らず、脇道へと逸れる。本堂の周囲にも糸塚や稲荷尊、当時の景観を描いた浮世絵の紹介など、歴史を感じさせるものが多い。
そういったものと比べると、三角点は実にひっそりと足元に存在していた。お馴染みの石造りの直方体は地上には姿を見せておらず、三等三角点と刻まれた石蓋だけを見ることができる。
ここへのアクセスは、浅草駅から墨田川沿いを北へ歩いていく方法がおすすめだ。徒歩10分程度の距離だが、きれいに整備された隅田川沿いを気持ちよく歩け、スカイツリーを見ることもできる。
■都内最低峰の次は「東京都区内の最高峰」へ
次に目指したのは東京都区内の最高峰。浅草から電車を乗り継いで新大久保駅で下車した。建物ばかりで最高峰らしき山は駅前からは確認できない。
それもそのはず。目指す箱根山(はこねやま)は戸山公園内にあり、その標高は44.6m。都市開発の進んだ現代では目立つような高さの山ではないのだ。
箱根山の歴史を簡単に紐解くと、かつて庭園に配された人工の築山(つきやま・人工的に作った小山のこと)のひとつだった。本来は玉円峰(ぎょくえんぽう)と名付けられ、箱根山と呼ばれるようになったのは明治になってから。
さらに明治期には陸軍用地となって戸山学校が置かれて国有地となるなど、時代の世相を反映した歴史を歩んできている。
現在の箱根山は戸山公園のシンボルとして鎮座しており、春には桜の名所として地域の方々に親しまれている。筆者が訪れたのは12月上旬だったが、まだ紅葉を楽しめたのは嬉しい誤算だった。さらにこの箱根山、登山者には嬉しい要素がひとつある。登頂を果たすと登山証明書をもらえるのだ!
発行は戸山公園サービスセンターで行われるので、ぜひ登頂を果たした暁には立ち寄ってもらいたい。筆者もしっかりと登頂証明書を頂いた。
また、タイミングによっては職員の方に箱根山の歴史を解説してもらえるので、こちらも興味がある方は聞いてみてはいかがだろうか。
アクセスは公園を中心に西側からは山手線・新大久保駅、東側からは東京メトロ副都心線・西早稲田駅が近い。東京メトロ東西線・早稲田駅からアクセスする場合は、浅草から上野駅まで歩き、東京メトロ銀座線に乗ることになるが、街歩きを楽しみむならこちらのルートもおすすめだ。