ネパールのカトマンズに降り立ったのは、2025年4月半ば。乾季のまぶしい日差しの下、街はトレッキングに向かう人たちで賑わっていた。
しかし、僕がカトマンズを訪れた目的は旅ではない。移住である。まずは生活の基盤を作ること。家を探し、生活に必要なものを揃え、暮らしに慣れる。すべてが初めての経験で、手探りで進めていくしかなかった。
僕が体験した怒涛の1か月と、ネパールでの生活にかかる費用の目安についてお話ししよう。
■カトマンズのホテルで生活準備
僕はカトマンズにある大学に通うために移住してきた。入学手続きは5月、新学期は7月スタート。その準備期間を見越して、4月半ばに入国した。
当然、生活を始めるには家が必要だ。だが、この「当たり前」が海外では驚くほど大きな壁になることがある。
日本なら、前の家に住みながら物件を探し、内見して契約という流れが一般的だ。しかし、ネパールでは事情が全く違う。僕はしばらくカトマンズのホテルを拠点にしながら、家探しをすることにした。
■物件探しは「情報」ではなく「つながり」が大事
最初は日本と同じノリで、不動産サイトを眺めてみたものの、ネパールのサイトはとにかく情報が少ない。写真が数枚と家賃の数字がぽつんと置かれているだけで、うーん、これだけではまったく生活のイメージがわかない。
問い合わせメールも送ってみたが、待てど暮らせど返事がこない。まあ、予想はしていた。ネパールでのやり取りは、いまだに電話が主流なのだ。
とはいえ、ネパール語で電話をするのはまだ無理だし、英語で交渉するのもハードルが高い。困ったな。
こういう時は人を頼るが一番。というわけで、現地の日本人、ネパール人の知人に相談すると、口を揃えて返ってきたのは「人を介して見つけるのが一番安心」というアドバイスだった。
外国での賃貸契約は、想像以上に複雑になる場合がある。「焦って決めずに、時間をかけて探したほうがいい」という助言はたしかに納得できた。
家を探して1週間ほどたった頃、思いがけない連絡が届いた。十年以上のつきあいがある会社のオーナーが、「ちょうど2週間ほど前に、うちの物件の1部屋が空いた」と教えてくれたのだ。
部屋は家族向けで2LDKの約60平方メートル。ただし、1部屋は会社側がバックヤードとして使うため、実質1LDKになる分、家賃を下げられるとのこと。
家賃は光熱費込みで3万5,000ルピー(約3万8,000円)。
カトマンズ中心部の相場(3~5万ルピー ※あくまで僕が複数人の知人から聞いた情報)を考えれば悪くない。さらに、家具家電すべてが備え付け。ベッドからキッチン用品、ガスコンロ、浄水器、WiFiまで完備。買い足すものはほぼない。
しかも、大家さんは日本語堪能で、やりとりもしやすい。十年以上通っている馴染みのエリアという点も含め、条件としては申し分ない。
内見を終えた時点で、気持ちはほとんど決まっていた。