■食事は外食+自炊
入居後、生活は徐々に日常の形を帯びていった。
食事は、朝と昼は外食、夜は自炊するスタイルが定着した。外食が多めなのは、値段の安さもあるが、あえてローカルのお店に行き、やり取りを通してネパール語を上達させるためでもある。
あくまで僕がよく行くお店の朝食は、サモサ、チャナ(ひよこ豆)、アルー(じゃがいも)、チヤ(ミルクティー)あたりを適当に組み合わせて、だいたい80〜100ルピー(87〜109円)。
昼はモモ(ネパール餃子)とチョウメン(ネパール焼きそば)が、それぞれ100ルピー(109円)前後、ダルバートが170ルピー(185円)だ。
夕食の自炊は、野菜は近所の青果市場で、肉や調味料、米はスーパーで揃える。必要なものが手に入りにくいこともなく、思った以上にスムーズに揃えることができる。
日本食が恋しくなることもあるが、日本の調味料も少し割高だが手に入る。でも、僕はネパールをより深く理解するために移住してきたので、「郷に入れば郷に従え」が基本スタンス。もちろん、たまに日本食レストランに足を運ぶことはあるけども。
そんなこんなで、家賃と食費を合わせても約5万ルピー(約5万4,000円)。雑費を含めても、ひと月に5万2,000ルピー(約5万7,000円)もあれば、十分暮らしていけそうだ。
■カトマンズ市内の移動手段は?
カトマンズの移動手段は、バス、タクシー、車、バイク、徒歩の5つが一般的。なぜか自転車に乗る人は驚くほど少ない。なかでも、ひときわ目立つのがローカルバス。そこらじゅうから湧き出してくる。
料金は20〜30ルピー(22〜33円)と財布に優しいが、初心者にはなかなか手ごわい乗り物だ。
まず、バス停がない。正確に言うと、一部の公共バスにはバス停があるのだが、ローカルバスは基本、停まる場所が自由。
乗ろうかなぁと思いながら道路脇を歩いていると、助手が半身を車外に投げ出しながら「○△#%□ーッ!」と叫んでくる。おそらく行き先を言っているのだが、僕にはただの叫びにしか聞こえない。聞き取れないうえに、行き先表示も文字が読めない。結果、どこ行きなのか、ほぼ賭けでしかない。
試しに乗ってみたこともある。助手の叫びは相変わらず謎に満ちていたが、なんとなく語感が目的地と似ていたので、たぶんこれかなと思って乗り込んでみた。
しかし、乗った瞬間に後悔が始まる。車内はすでに満員。それでも助手が「オッケー、オッケー」という感じで、さらに乗客をどんどん招き入れてくる。これが普通だからか、みんな涼しい顔をしている。これくらいのことを気にしていたら、とてもじゃないがネパールでは暮らせない!
ところが、問題はここからだった。Googleマップを確認しながら、そろそろ着くかなと思った瞬間、バスはまったく別の方向に曲がっていった。バス停がないので降りるタイミングもつかめず、気づけば目的地からどんどん遠ざかっていく。
「え? どこに行っちゃうの?」
助手に聞こうにも、彼はドアのところで身を乗り出して、また何かを叫んでいる。
最終的に、僕は目的地とはまったく違う場所で降りることになった。別のバスで戻ろうとも考えたが、もはや不安しかなかったので歩いて帰ることにした。
「よし、次からはタクシーにしよう」
心に強く刻んだ瞬間だった。
その点、タクシーはとてもわかりやすい。配車アプリを使えば値段は明確だし、車とバイクを選べる。バイクタクシーなら5kmで150ルピー(164円)ほど。行き先が保証されているという安心感は大きい。
■学ぶことと、働くことと、暮らすこと
僕は学生ビザのため、ネパールで働くことはできない。働く場合は、就労ビザ(Working Visa)か、ビジネスビザ(Business Visa)が必須になる。前者はこっちの会社に雇用されて働くことで、後者は自分で会社を設立するケースだ。
将来的にビザを変えて働く可能性もゼロではないが、今のところは考えてはいない。
今は、ネパールで学び、ネパールをより深く理解することに時間を使いたい。
移住1か月目は、新しい暮らしが始まったばかり。まだ非日常にいるというか、旅の延長のような感覚だ。今はそこから早く脱け出して、自分なりの“カトマンズの日常”を手に入れたいと思っている。