虫が少なくなる秋は、まさにバーベキューにぴったりの季節。澄んだ空気の中で味わう秋の味覚は格別で、炭火でじっくり焼けば、香ばしさと旨みが一段と引き立つ。
しかし、どんなバーベキューセットを選べばいいのかわからない人や、準備や片付けが面倒そうと悩む人も多いはず。そんな人たちに筆者がおすすめしたいのが、昔ながらの七輪だ。
設置も簡単で、片付けもラク。秋の味覚をよりおいしく、そして風情と共に堪能したいのであれば、七輪でのバーベキューが最適だ。本記事では日本古来からある伝統的な七輪の魅力について紹介する。ぜひ、参考にしていただきたい。
■7割程度の炭の量で調理できる「七輪」とは?
七輪は江戸時代に誕生し、一般家庭で広く使われるようになった。明治時代以降、主流だった陶器製から珪藻土製が普及し、戦後生活には欠かせない調理器具となった。
明治時代、珪藻土製の七輪が爆発的に普及。なお、七輪の語源は「調理する際、七厘程度の炭で間に合う」といわれており、少ない炭でしっかり火力を保つことができ、手軽に本格的な炭火焼きを楽しめるアイテムとなった。
現代では、キャンプやバーベキューなどのアウトドアシーンでも人気が高く、食材の旨みを引き出す調理器具として再評価されている。
■七輪の種類と形状
七輪は大きく分けて、2種類の製法や形状があるので紹介しよう。
●「切り出し七輪」と「練り物七輪」 2種類の製法
「切り出し七輪」と「練り物七輪」の2種類の製法がある。「切り出し七輪」は、珪藻土を職人が一つひとつ削り出して作るため、価格は10,000円を超え、一般的な七輪の3〜5倍ほど。軽くて丈夫で、火持ちや耐久性にも優れている。
一方、「練り物七輪」は珪藻土の粉を練ってプレス成形したもので、珪藻土を崩して他の粘土やおがくずを混ぜているため、3,000円前後とリーズナブルな価格になっている。
●形状による違い
形状は大きく分けて「円形のラッパ型」と「平型」の2つ。ラッパ型は煙突効果による上昇気流で強い対流熱を生み、少量の木炭で強い火力を維持できる。ただし、食材をのせられる面積が小さいのがデメリット。
一方、平型七輪は炭を広く配置でき、焼きに使える面積が広いのが特徴。秋刀魚など長い食材も十分焼ける面積がある。
■本格炭火焼きを七輪で楽しむメリット
七輪にはデザインや使い勝手など、ほかのバーベキューコンロにはない魅力がある。
●炭に火をつけやすい
七輪は、底部や側面に設けられた空気口から酸素が効率的に供給されるため、炭が燃焼しやすく、少ない火種で炭を起こせるのが特徴。また熱に強い分厚い珪藻土により、蓄熱性が高く、火力が安定して持続可能だ。炭起こしに慣れていなくても扱いやすく、初心者にもおすすめである。
●コンパクトで持ち運びしやすい
持ち運びのしやすさも大きな魅力のひとつだ。コンパクトな形状で、庭先やベランダ、キャンプ場など、場所を選ばずに手軽に使うことができる。
取っ手付きのタイプも多く、移動や設置がスムーズに行えるのも便利な点。組み立ても必要なく、炭と着火道具さえあればすぐに使うことができる。1〜2人ならば更に小型の卓上タイプもあり、非常時の調理にも重宝するだろう。