■なぜ七輪だと食材がおいしく焼けるのか?

七輪で食材を焼くとおいしくなる秘密は、炭と珪藻土からの遠赤効果

 では、なぜ七輪だと食材がおいしく焼けるのだろうか。これは、ステンレス製のバーベキューコンロにはない、炭との相性が抜群の珪藻土が関係している。

●炭と七輪は最強のタッグ

珪藻土からも遠赤外線が発生する

 ガスの火に比べ、炭火では約4倍の約8kWもの遠赤外線が発生する。この高い遠赤外線効果により、食材の表面を一気に焼き上げながら内部の水分を閉じ込め、外はパリッと香ばしく、中はふっくらジューシーに仕上げることが可能だ。

 さらに、七輪で使われている珪藻土は、熱と反応することで遠赤外線が発生するため蓄熱性も高く、おいしい炭火焼きが楽しめる。炭と七輪は、まさに最強のタッグなのだ。

●炭は黒炭と白炭(備長炭)のブレンド使いでさらにおいしく

(左)黒炭、(右)備長炭

 使用する炭は、黒炭で火起こしをしてから備長炭に火を移す「ブレンド使い」がおすすめ。黒炭は着火しやすく、短時間で高温になりやすいため、火種づくりに最適。一方、備長炭は火がつきにくい反面、いったん赤くなると高温が長く続き、遠赤外線効果で食材をふっくら香ばしく焼き上げることが可能だ。

 黒炭の強い火力で備長炭に効率よく着火し、その後は備長炭の持続的で安定した熱を活かすことで、炭の無駄がなく、食材の風味も格段に向上するのだ。

■七輪を極める火加減テクニック

 七輪は炭を密集させれば強火になり、間隔を空ければ弱火にでき、炭の配置で火力を調整できる。なお、ベストな状態は炎が落ち着き炭表面が白くなった熾火状態。炭を足せば強火になり、灰をかければ火力を抑えられる。

●ステーキや焼き鳥は「遠火の強火」で焼き上げる

 七輪でステーキや焼き鳥を焼く際のポイントは、「遠火の強火」で焼くこと。炭の直上ではなく、少し距離をとり、強い火力と遠赤外線でじっくり火を通すのがコツだ。

 表面を一気に焼き上げることで旨みを閉じ込め、外は香ばしく中はふっくらジューシーに仕上がる。直火で焦がすのではなく、炭の輻射熱で均一に焼くことで、肉の風味と食感が格段によくなるのだ。

●魚や野菜は弱火で水分をとばし、旨みを凝縮

魚を焼く際、目指すのは「皮パリ中ジューシー」

 七輪で魚を焼く際は、火力をやや弱めにして、皮をパリッと香ばしく仕上げながら中までじっくり火を通すのがコツ。強火だと身が崩れやすく、焦げやすいため注意が必要だ。

 野菜は低温でじっくり焼くことで水分がほどよく抜け、甘みや旨みが凝縮される。炭火ならではの遠赤外線効果で、外は香ばしく中はしっとりと仕上がるのが魅力だ。

■七輪を扱う際の注意点

火消し壺の炭は再利用可能。一度着火している炭は次に使う時着火しやすい

 七輪は冷めるまで時間がかかるので、火傷にも注意が必要だ。使用した炭を火消し壺などに移し、冷めるまで待ってから片付けよう。

 使用中は、テーブルや地面も熱くなりやすいため、台やスタンドの上に置くのがおすすめだ。珪藻土を使用した七輪は、水に弱いので水をかけて火を消したり水洗いしたりするのはNG! 割れたりヒビが入りやすくなってしまうので注意が必要だ。

■手軽に使える七輪で本格的な焼き物体験を楽しもう!

食材を眺めがら、チビチビ飲む時間を楽しめるのも七輪ならでは

 バーベキューといえば鉄板や網焼きのイメージが強いが、七輪にはステンレス製グリルにはない独特の風情がある。炭の香ばしい香りと、じんわりと伝わる遠赤外線のぬくもりが、どこか懐かしい雰囲気を演出してくれる。

 七輪には食材をじっくり眺めて、焼けるタイミングを待って、じっくり味わうスロースタイルがよく似合う。おいしいお酒を飲みながらのんびり会話を楽しめるのも七輪ならではだ。 

 火加減を調整しながら、肉や魚、野菜それぞれの旨みを引き出してみよう。手軽で奥深い炭火調理の世界を、ぜひ七輪で体験してほしい。