◼️もうこれはハクサンではなく、ハクサマなのよ
結局、私たちは雲より早く登頂できたみたい。喜びのあまり、ぴょんぴょんしながら山頂標識に向かう。そして途中で振り返ってみて初めて気がついた。
わああ!
なんと、私たちを追っていた雲は、山頂までは上がってこずに、眼下に美しい雲海を作り上げていたのだ。青空に真っ白い山頂、下に見える真っ白い雲海。なんていう景色だ! そして、あたりは音ひとつせず、とっても静か。あまりの贅沢な瞬間に、神様の存在を感じた。
どんな姿をしているかはわからないけど、間違いなくこの山頂には神様が住んでいらっしゃる。あまりにも神々しい景色に感激し、山頂にある社の前で手を合わせる。白山の神様、これからもこの素敵な地域を守っていてくださいね。
後日、福井県の荒島岳山頂で出会った方が、白山を眺めながらこんなことを口走った。
「ああ! もう! これはハクサンではなく、ハクサマなのよ」
その言葉を聞いて、白山に登頂した日の、あの気持ちを思い出した。以来、私はこの神々しい山のことを「ハクサマ」と呼んでいる。荒島岳から眺める白山も、私が登頂した白山も、やはりどっちもハクサマなのよね。