「東京湾でタコが釣れるって?」
タコ釣りといえば、壺に入っている姿が思い浮かぶが、まさか自分で釣る日が来るとは思ってもいなかった。生きて動くタコは水族館でしか見た記憶がないし、タコを釣るなんて想像もつかない。そんな筆者が、東京湾のタコ釣りに挑戦。
釣って、触って、食べて、感動する“うまい体験”を紹介する。
■初心者でもタコが釣れると実感した3つの理由

●準備はタコエギとオモリだけ
7月下旬の朝6時ごろ、船に到着した。東京湾では乗合船も多く出ているが、今回筆者はチャーターボートに乗船。乗船の手続きを済ませ、渡されたレンタル竿に事前に購入した3.5号のタコエギ、15号のオモリを船長のお手本通りにつけていく。釣り具を持っていない自分でも、準備は万端だ。
●ひたすらに“海底をノック”
いよいよ出航。軽く揺れる船に少し緊張したが、東京湾の広がる景色に気分は高まっていった。ポイントに到着すると、船長から釣り方のレクチャーが始まる。まずは船長のお手本をよく見る。「竿を上下に軽く動かして、海底をトントンとノックするように動かすだけ」という説明は想像以上にシンプルで、初心者の自分にもすぐできそうだ。
竿を持ち、教わった通りに動かし続ける。最初は底についているのかわからなかったが、何度も挑戦しているうちに感覚が掴めるように。まるでドアをノックするように繰り返していると、トントンとならなくなった。船長から「掛かった! 竿を上げて巻いて!」と言う掛け声とともに突然「グンッ」と竿先が重くなる。
慌てて言われた通りに竿を引き巻き上げると、そこにはエギにしっかりへばりついたタコの姿。釣り上げた瞬間の興奮と、ぬるっとした手触りの衝撃は忘れられない。
●5時間で10杯超の釣果! 初心者でも楽しめるタコ釣り
その後も5時間の釣行でリリースしたものも含めると15杯ほどのタコを釣ることができた。釣れない時間や根掛りで悪戦苦闘したときもあったが、船長からのアドバイスで竿の動かし方やテンポを少し工夫するだけで、また“グンッ”という感触が訪れる。そのたびに胸が躍り、時間はあっという間に過ぎていった。
こうして一日の釣行を終えて感じたのは、道具が扱いやすいこと、釣り方がとてもシンプルなこと、そして都内からのアクセスが良く気軽に挑戦できること。この3つの理由から、初心者でもタコ釣りを楽しめると確信した。
■釣れたタコとの迫力ある格闘と、怖がらずに扱うための2つのコツ

「タコが釣れたらどうすればいいのか? 触るのが怖い……」という不安は、初めてではよくある悩みだ。筆者もまさにそうで、最初の一杯を釣り上げた瞬間、その迫力に圧倒された。ヌルヌルと動き回る元気なタコは手やタコエギ、さらには船の床にまで吸盤でしがみつき、どう持てばいいのか分からずあたふたしている間に、タコは脱出を図り格闘が始まった。
最初は船長に助けてもらいながら対処したが、そのときに教わったのが、釣ったタコを安全かつ落ち着いて扱うための2つのコツだ。
1つ目は「タコの生態を知っておくこと」
タコの口は脚が集まる中心部にあり、硬くて鋭いくちばしがある。素手で触れると流血の危険性があるため、くちばしに触れないよう、目を覆うように頭を握って持つことが大切だ。
2つ目は「締め方を覚えておくこと」
タコは目と目の間にピックなどの鋭いものを刺すだけで簡単に締められる。この方法を知っていれば、初心者でも焦らず仕留めることができる。
最初は船長や釣り経験者の夫や友人に頼っていたが、何度か経験するうちに、教わった通りの持ち方と締め方で処理し、ビニール袋に入れてクーラーボックスで保冷する一連の流れを自分だけでこなせるようになった。