茨城県最北部、福島県との県境にそびえる八溝山(やみぞさん・標高1,022m)は、県内最高峰にして、自然と信仰が息づく静かな名峰である。八合目付近には「名水100選」の一つに選定された八溝川湧水群が、山頂には大パノラマを満喫できる展望台がある。

 車で中腹までアクセスできるが、山頂まで登山道を歩いても、3時間ほどで往復できるのでハイキングコースとして人気を集めている。今回は、11月に訪れた際の登山の様子を紹介する。

■秋色に包まれたブナとカエデの森

 日輪寺入口にある登山口へは、茨城県大子町(だいごまち)側からは、常陸大子駅から車で約1時間。舗装路を進むと、標高約700m付近の八溝林道口に登山者用の駐車スペースがある。ここから山頂を目指して歩き始めると、道の両側にはブナやカエデが立ち並び、晩秋の柔らかな光に包まれていた。11月の森は紅葉のピークを少し過ぎていたが、落ち葉が足元を覆い、カサカサと音を立てるたびに心がほどける。道はよく整備されており、急登もなく、序盤の足ならしにちょうどいい。

枯葉の道。澄んだ空気と足元のサクサクとした木の音が心地よい

■歴史を感じる寺院と神社を巡る

 八溝山は、古くから修験の山として信仰を集めてきた山である。登山道を進むと、まず現れるのが「八溝山日輪寺」。山中とは思えぬ立派な山門をくぐると、苔むした石段の上に静かにたたずむ本堂が現れる。日輪寺は、奈良時代に行基が開山したと伝えられ、修験者の修行の場として知られてきた。境内には石仏や古い地蔵が点在し、どれも長い年月を感じさせる。筆者が訪れた時には寺の周囲は霧が立ちこめ、幻想的な雰囲気に包まれていた。さらに登ると、山頂近くには「八溝嶺神社(やみぞねじんじゃ)」がある。木々の間から差し込む光を受けながら鳥居をくぐると、静寂の世界が広がる。旅の安全を祈願し、最後の急坂を登りきると、山頂の展望台が姿を現した。

八溝山日輪寺の本堂