9月下旬の茨城県・霞ヶ浦(かすみがうら)。湖畔沿いには、この地ならではの広大なハス田が広がっている。夏には大きな葉が水面を覆い、花を咲かせていたハスも、今は枯れ葉が秋風に揺れ、独特の風情を漂わせている。そのハス田の脇を流れる小さな水路には、今回の釣りの主役である小ブナたちがひっそりと身を潜めている。
霞ヶ浦周辺では古くから、秋になるとこの小ブナを狙った数釣りが親しまれてきた。子どもから大人まで気軽に楽しめることから、今もなお秋の風物詩として多くの釣り人を惹きつけている。本記事では、そんな霞ヶ浦の小水路を舞台にした小ブナ釣りの魅力を、実際の釣行の様子とともにお届けする。
■水郷・霞ヶ浦の「ハス田」エリアに広がる小さな釣り場
今回、筆者が小ブナ(ギンブナやキンブナの子ども)釣りに訪れたのは、霞ヶ浦(西浦)の湖岸沿いにある田んぼの脇を流れる小さな水路、通称「ホソ」である。日本有数の水郷地帯として知られる霞ヶ浦周辺には、稲作を行う「イネ田」と、レンコンを育てる「ハス田」という二種類の田んぼが広がっている。
秋になるとイネ田では稲刈りが始まり、田んぼの水が落とされるため、周囲のホソも干上がってしまう場所が少なくない。これに対して、ハス田はほぼ一年を通じて水を張ったまま管理されるため、脇を流れるホソにも水があり、小ブナたちが潜んでいる。
レンコン収穫量が日本一を誇る茨城県の中でも、とりわけ「土浦市」と「かすみがうら市」は栽培が盛んな地域で、当然ハス田も多く、安定した水量をもつホソが点在している。こうした背景から、筆者は今回、小ブナ釣りの舞台としてこのエリアを選んだ。
■秋の風物詩! 小ブナ釣りならではの楽しさと魅力
霞ヶ浦のホソで秋に楽しめる小ブナ釣りは、この季節ならではの魅力をもつ釣りだ。春に孵化したフナの稚魚は夏を経て2~4cmほどに成長し、そのなかでも特に小さな個体は親しみを込めて「柿の種」と呼ばれている(成魚は20~30cmほどになる)。彼らは成長段階にあり食欲が旺盛なため、エサへの反応がとてもよい。初心者でもわりと簡単に数釣りを楽しむことができる。
こうした釣りやすさこそが小ブナ釣りの魅力であり、実際に竿を握れば、その楽しさをすぐに実感できる。仕掛けを落とせばウキがすぐに動き、アワセを入れると小気味よく竿先が震える。その「ブルブルッ」とした手応えに、小さな命の息吹と秋のぬくもりを感じ、思わず頬がゆるむ。
近年は異常気象で季節感を感じにくいこともあるが、こうして秋の小ブナ釣りを楽しめていることに、自然の恵みへの感謝がこみ上げてくる。秋風が頬をなで、虫の声が響く水辺で竿を振る体験は、大人はもちろん子どもたちにもぜひ味わってほしい。