昔から釣り人たちの間で「オカメ」の愛称で親しまれているタイリクバラタナゴ(以降、タナゴ)。その新子(しんこ・幼魚)を狙った釣りが好調との情報を聞きつけ、11月中旬に茨城県霞ヶ浦(かすみがうら)のホソ(水路)を訪れた。果たしてこの時期ならではの新子の数釣りは楽しめたのか?  釣行の模様をレポートする。

■秋~初冬に楽しめる新子の数釣り

ホソの中を覗くとタナゴの新子たちが群れをなしていた。背ビレの黒い斑点が幼魚の証(メスは成魚になっても黒斑は残る)

 霞ヶ浦沿岸にあるホソ(霞ヶ浦と田んぼを繋ぐ小水路)では、毎年秋を過ぎるとタナゴ釣りが盛んに行われるようになる。その年の春から夏に生まれた新子と呼ばれる全長2~3cmほどのタナゴの幼魚(成魚は6~8cmほどになる)がターゲットで、彼らは食欲旺盛でしかも群れで行動することから、数釣りが楽しめるとあって人気の釣り物となっている。

 タイリクバラタナゴは日本に生息するタナゴ類(18種類)の中でも、とりわけ口が小さいとされており、その幼魚はさらに口が小さく、針掛かりさせるのは至難の業。新子を釣るための専用の極小針も売られているが、それだとまだ大きすぎると顕微鏡をのぞきながら自ら針を研いで改良するツワモノもいるくらいタナゴ釣りの世界は奥が深い。

季節が進むと新子のサイズは次第に大きくなる。このため一円玉サイズが狙えるのは初冬くらいまでである

 タナゴ釣りの世界ではよく「一円玉サイズ(2cm)」という言葉が使われるが、このサイズのタナゴが釣れるようになれば、釣り師としてもう一人前だという証になっている。つまり一円玉より小さい魚に価値を求めているのだ。世界最小の釣り物といわれるタナゴ釣りの価値観は独特なものがある。

■タナゴ初心者は、釣り人が集まるホソを探るのが確実

今回筆者がタナゴ釣りを楽しんだホソの様子。幅はおよそ1mで水深は20~30cmほど

 国内屈指のタナゴ釣り場として知られる霞ヶ浦であるが、どこのホソでもタナゴが釣れるという訳ではない。このため土地勘のない初心者がいきなり現地に出かけても釣れない事態に見舞われることが多い。もしこれから霞ヶ浦でタナゴ釣りを始めたいと考えている人は、まずは釣り人が集まるホソを探すことから始めるといいだろう。筆者の経験上、これがもっとも手っ取り早く確実な方法であると断言する。

 湖岸脇の農道に沿って車をしばらく走らせれば、ホソで釣りを楽しむ人の姿がきっと目に入るはずである。そんな人を見つけたらもうしめたもの。きちんと挨拶を交わした後にタナゴが釣れているかどうかを訪ねてみよう。相手もおそらくこのような釣り人同士の交流を通じてタナゴが釣れるホソの情報を手にしてきたに違いないのでお互いさま。決して嫌な顔はしないはずである。

 もし釣れているようならば、近くで釣りをさせてもらえないか伺いを立てた後に釣り座を構えよう。とにかくお互い気分よく釣りが楽しめるように意識してコミュニケーションをとれば、ポイント探しはきっとうまくいくはずである。