先日、冬の釣り物として日本人に古くから親しまれている寒ブナ(冬の時期に釣れるフナ)釣りに出かけてきた。場所は茨城県牛久沼(うしくぬま)の北部に広がる水郷エリアで、そこを流れる河川の脇を走る小水路である。
「寒ブナは3匹釣れれば御の字!」と言われるほど、あまり数釣りが期待できる釣り物ではないのだが、思いのほかよい釣りが楽しめたので、その模様をレポートする。
■足で探し出す寒ブナのポイント
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今回、筆者が訪れた牛久沼の北部エリアには利根川水系の河川である谷田川(やたがわ)、西谷田川(にしやたがわ)、稲荷川(いなりがわ)が流れ、牛久沼へと注いでいる。
3つの河川は昔からフナ(ギンブナ、キンブナ)やヘラブナ釣りの人気フィールドで、これら河川と水門を介してつながっている農業用の小水路(田んぼの水を排水するためのもので釣り人たちは「ホソ」と読んでいる)にも多くのフナたちが出入りしており、毎年多くの釣り客がここを訪れている。
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寒ブナ釣りが旬を迎える12~2月、川の水温はフナたちが好む水温を大きく下回っているため、魚の活性は著しく低下している。水温が少しでも高い場所や水温変化の少ない川やホソの淀みや深みなどに移動して、あまり動かずに体力を温存する生活、いわゆる冬越しをすると言われている。
この時期のフナたちは自ら積極的にエサを探し回ることはないため、鼻先にエサを落とさないと釣果を得るのは難しいとされる。1か所のポイントで魚がやって来るのをじっと待っているだけでは釣れないのは明らか。寒ブナが冬越しする場所を足で探し出すしかないだろうと判断し、ポイント移動を繰り返す釣りに徹した。
■探り釣りには、シモリウキ仕掛けが◎
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フナは一般的に川底近くにあるエサを食べると言われている。彼らにエサを見つけてもらうためには、釣りエサがしっかりと水底近くにあることがとても重要となる。
この釣り場でよく見られる三面(両サイドと底面)がコンクリートで覆われたホソの場合、その見た目からホソのどこを探っても、水深はみな同じように思えるが実はそうでもない。田んぼから流れ出た土砂や周囲の枯れ草などが川底に堆積するため、水深は場所によって数cm~数十cm単位で変わってくる。
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ホソを転々と歩きながら探り釣りをする際、数歩移動するたびにエサが川底にくるようにウキ下(ウキからハリまでの長さ)の調整をしていたのでは時間があまりにも掛かり過ぎてしまい、釣りのテンポが悪くなってしまう。
この問題を解決するためには「シモリウキ仕掛け」が適しており、ウキ下の微調整をしなくともエサが常に川底にくるようになるのでおすすめである。
ちなみに、「シモリ」とは「沈む」の意味で、ウキが水中に沈んだ状態で使用することからついたもの。適当な間隔で複数個取り付けたシモリウキが(水深の深い場所では)すべて水中に沈むようにオモリの調整をするため、釣りエサが常時川底にあるというわけだ。
当日は長さ1.4mの淡水用小物竿にシモリウキ仕掛けをセット、エサにはフナ釣りではおなじみの生きたアカムシ(ユスリカの幼虫)を使用して、釣りを開始した。
使用したタックルと道具は、以下のとおりである。
【筆者の使用タックル】
ロッド:淡水用小物竿 1.4m
ライン:ナイロンライン 0.6号
シモリウキ: 0号のシモリ玉を5個使用
オモリ:ガン玉、板オモリ 適量
ハリ:袖針1号(0.4号のハリス付き)
エサ:生きたアカムシ、グルテンエサ(ヘラブナ用)
【あると便利な道具】
小物用の針外し:魚に触れず針が外せる
エサ入れ:エサが乾燥するのを防ぐ
水汲みバケツ:釣った魚を生きたまま一時的に入れておくもの
エアーポンプ:水汲みバケツに入れた魚に酸素を供給するポンプ
折りたたみ椅子:釣り場での腰掛
小型の観察水槽:釣った魚を横から観察できる
手洗い用の水:ペットボトルに入れて用意
タオル:濡れた手を拭くために使用
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■寒ブナはどこ? タモロコの猛攻に苦戦
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この日、筆者は合計4か所のホソを探った。これらのホソには河川とつながる水門があるのだが、この水門を起点に1時間以上かけて釣り歩いた。期待した釣果が得られなければ別の水門へ移動し、そこを起点にまた歩きながらホソを探っていくということを4回繰り返した訳である。
釣りを開始してすぐに魚の反応を得たのだが、相手は外道(目的以外の魚)のタモロコ(コイ科の小型淡水魚)ばかり。ホソの釣りではよくあることなので想定内だったが、あまりにもタモロコが釣れ過ぎて嫌になってしまうほどだった。そんななか本命のフナが顔を出してくれたのは、タモロコを数十匹ほど釣りあげたあとのこと。
それまでは何度も「このホソにはフナはいないのではないか?」と気持ちが揺らいだのだが、いると分かれば俄然やる気が湧いてくるというもの。このあとは今まで以上に集中力を高めて探り釣りを続けたのだった。
そして2か所目、3か所目のホソでも同じようにタモロコの攻勢が続く中、ときおり本命のフナが顔を出してくれ、筆者をホッと和ませてくれた。
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