東京の八王子と聞けば、都心のベッドタウンのイメージが浮かぶが、かつてこの地は、関東広域を統治する一大勢力、北条氏の一拠点であった。かの小田原北条氏である。相模の西端の小田原から、広大な関東平野へ勢力拡大を意図し、統治政策の一つとして八王子城を築いたのだ。そこ八王子城跡の山域を紹介する。

■管理棟で城の資料をゲットしてハイキングスタート

西東京バス「霊園前・八王子城跡入口」バス停から登山口までは西に見える山に向かって歩いていけばよい

 八王子城へはJR中央本線の高尾駅から向かう。高尾駅北口1番バス乗り場から西東京バスを利用し、停留所「霊園前・八王子城跡入口」で下車。約20分ほど歩くと登山口へ到着する。まずガイダンス施設か管理棟へ向かい、散策情報などをゲットするのがおすすめだ。

 管理棟裏手にある登山口から、山頂の本丸跡のすぐ近くにある「八王子神社」を目指す。八王子城の守護神であり、八王子の地名の由来ともなった神社だ。 

 八王子神社は牛頭天王(ごずてんのう)とその八人の王子を祭神とする神社であり、全国にいくつか存在する。東京の八王子の地には、10世紀に僧・妙行が「八王子権現」として祀ったのが起源だ。その後、北条氏照がこの地に城を築くにあたり守護神としたのである。これを契機として、この城は「八王子城」と呼ばれることになり、その名称が、今日の東京「八王子」の地名として定着していったといわれる。

 山城という史跡であるが故に、経路は正に登山道の趣で、勾配がそれなりにある。観光地的になっていない感じがいい。場所によっては、勾配がきつい箇所があるのでトレッキングシューズをおすすめする。

 歩いて40分もすれば八王子神社に到着だ。

■松木曲輪で戦国時代に思いを馳せる

松木曲輪跡からの眺望。都心の高層ビル群を望む

 八王子神社に参拝して隣接する「松木曲輪(まつきくるわ)」跡に向かう。ここにはテーブルとベンチがあり眺望が楽しめる。南には高尾山方面、その先には相模湾、東方面には八王子市街から多摩丘陵、その遙か先には都心の高層ビル群にまで視野が及び、一休みするには好適地である。

 また、この松木曲輪の掲示板をはじめ、史跡の解説文には前田利家や上杉景勝といった名だたる武将が登場する。まさにここは、「兵どもが夢の跡」の舞台であったと実感できる。