昭和9年、日本で最初の国立公園として指定されたのが鹿児島県と宮崎県にまたがる「霧島」。その後、薩摩半島の開聞岳を含む南九州の広範囲が「霧島錦江湾国立公園」として生まれ変わった。この公園内にある、霧島山(霧島市)と開聞岳(指宿市)はともに日本百名山に数えられる名峰。鹿児島県が誇るこの2つの山を踏破する“アウトドアはしご旅”の様子を徹底レポートしていきたい。

■玄関口となる鹿児島空港

羽田空港を飛び立ち1時間40分で鹿児島空港に到着。南九州は意外と近いのだ

 まずは、鹿児島県へのアクセスから紹介していこう。九州の南端に位置する鹿児島県は、地元では錦江湾(きんこうわん)と称されている鹿児島湾をぐるりととりまくように広がる県。遠方から行くならば、飛行機の利用がやっぱり便利だ。空の玄関口となるのが鹿児島空港。

 空港から主要な都市に向かうバスもあるが、あちこちの土地をめぐるならレンタカーが効率的。空港周辺に多数のレンタカー会社が点在し、予約しておけば空港から送迎バスで店舗に移動し、出発の手続きがスムーズに行なえる。

鹿児島空港 公式HP 

■霧島山の最高峰「韓国岳」を目指す

車やバスでアクセスしやすい大浪池登山口から韓国岳への登山をスタート

 霧島山は、鹿児島県と宮崎県にまたがる火山群のこと。ひとつの山を指すのではなく、大小の山々が20以上も点在する広大なエリアの総称で、霧島連山などとも呼ばれている。その霧島山の最高峰となるのが標高1,700mの韓国岳(からくにだけ)。山域にはさまざまな登山コースが整備されているが、霧島市にある大浪池登山口から入山し、韓国岳に登るコースもある。

 実は、鹿児島空港があるのは霧島市で、空港から大浪池登山口は車で40分ちょっと。到着の時間によっては、空港に着いたその日の登山も可能なのだ。

 市街地と霧島山の主要登山口を結ぶ周遊バスも運行されているので、こうしたバスをうまく活用するのも手だ。

便利な霧島連山周遊バス
森の中に敷かれた石畳の道をのんびり登っていく
あちこちに自生している立派なアカマツの巨木。木肌も荒々しく堂々とした姿だ

 大浪池登山口から山に入ると、しばらくは歩きやすい石畳の道が整備されている。周囲に茂る木々は本州の山とは違った印象で、森を歩いているだけでも「違った山域にいるな」という気分が味わえる。霧島山は山ごとにさまざまな植物が自生しているというが、このあたりではアカマツをよく目にする。しかも、1本1本が高く太く立派で、木肌の赤さも鮮やかだ。

池の手前に建つ大浪池園地休憩所。ここまでくれば大浪池は目前だ

 登山口から大浪池までの所要時間は40分ほど。大浪池園地休憩所の小屋が見えたらそのすぐ先だ。この小屋にはトイレはないが、持参した携帯トイレを使用するスペースが設けられている。使用済みの携帯トイレは、登山口などに設置されている回収ボックスで捨てられる。

■コバルトブルーの水をたたえた「大浪池」

ビュースポットとして人気の大浪池。この景色だけ楽しんで登山口に戻るハイカーもいるという

 山道を登りきると、目の前に大浪池が現われる。コバルトブルーの水をたたえた神秘的なこの池は、霧島山に点在する火口湖のひとつ。約5万年前の噴火でできた直径約1kmの火口に地下水が溜まってできたものだ。池ができあがってから長い年月が経っているため、様々な植物が育ち、霧島山の花として有名なミヤマキリシマも自生している。

 ミヤマキリシマは大浪池や韓国岳などの周辺で見られ、5月下旬から6月上旬頃が花の最盛期。開花の時期はピンクや紫紅色の花で池や山が包まれる。また、霧島山ではあまり見られないブナやミズナラなどが大浪池付近には自生しており、秋になると周囲の木々の葉が赤や黄色に染まって、池と紅葉のコントラストが楽しめる。

コバルトブルーの水が神秘的な大浪池。対岸に見えるこんもりとした丸い山が韓国岳だ

■池の対岸から韓国岳にGO!

東回りのルート途中にあったひび割れた石。マグマが冷え固まったときにできた割れ目なのだとか

 大浪池の景色を堪能したら、対岸まで移動して目的地の韓国岳に向かう。火口の縁に沿って周回できる登山道が整備されており、今回は東回りで対岸へ。ルートのところどころに展望地があり、錦江湾や大浪池、新燃岳(しんもえだけ)などの景色を楽しめる。池の対岸まで向かうと韓国岳に登る分岐があり、その先はひたすら登りが続く。分岐近くの避難小屋でひと息ついて、いざ登り道へ。

韓国岳への分岐に入ると階段が続く。これをひたすら登っていく

 山頂まで続く1時間の登り道はほとんどが階段の連続。ひたすら歩みを進めると、次第に木々の背丈が低くなり、展望が開けてくる。山頂直下はごろごろと岩が転がり、それを登りきると韓国岳の山頂に到着だ。

 山頂からは眼下に雄大な大浪池、その向こうには錦江湾が見渡せる。空気が澄んだ日なら桜島も見えるという。霧島山の山並みも一望でき、2011年と2018年の噴火の足跡が感じられる新燃岳、その先には尖った山頂部を持つ高千穂峰(たかちほのみね)がそびえている。韓国岳のピークの裏手には直径800mにもなる大きな火口跡があり、のぞき込むと水が溜まっていた。普段、山頂の火口は枯れているというが、数日前に大雨が降ったからか、この日は青みがかった湖のようだった。「幻の湖を見れたのかも!?」と得した気分で韓国岳からの景色を楽しんだ。

高度が上がると低木が増えて展望が開けてくる。振り返ると大浪池や錦江湾が見えた
韓国岳山頂は岩が転がる開放的な空間。霧島連山も一望できる

<韓国岳(霧島山)おすすめルート>
大浪池登山口→大浪池→韓国岳→大浪池登山口
(所要時間:4時間50分) 

さまざまな植物と景観を楽しめる霧島山