日本で最初の国立公園に指定され、今年90周年を迎えた鹿児島県の「霧島」は、大小の山々で構成された霧島山と、その麓に湧き出る温泉を含めたエリアを指す。その観光拠点となるのが霧島市だ。火山活動によって出来上がったカルデラ地形の山、そして火山の恵みである温泉、さらには温暖な気候によって生まれた発酵食品の黒酢を使ったグルメなど、自然の営みが感じられる霧島市の楽しみ方&めぐり方を深堀りしていこう。
■霧島山の最高峰「韓国岳」
南九州にあたる鹿児島県。その県南部に位置する霧島市は、霧島山(きりしまやま)と錦江湾(鹿児島湾)が広がる山も海もある地域だ。天孫降臨神話の地として知られる霧島山は、ひとつの山の名称ではなく鹿児島県と宮崎県の県境に広がる大小20以上の火山が連なる山域の総称。このため、霧島連山や霧島火山群などとも呼ばれている。
火山活動により何万年もかけてできあがった霧島山は、カルデラ地形が広がる独特な山域。その最高峰となる山が標高1,700mの韓国岳(からくにだけ)だ。
韓国岳への登山ルートはいくつもあるが、霧島市からなら大浪池登山口からのルートが行きやすい。登山口から40分ほどで着く「大浪池(おおなみのいけ)」は直径630mの火口湖で、周囲約2kmほどの湖を周遊できるルートが整備されている。火口沿いのルートを西回りか東回りで対岸に向かい、そこから1時間ほど上ると韓国岳に到着。直径900mの火口が広がる山頂は視界が開け眺望抜群。眼下に大浪池、東方向には新燃岳(しんもえだけ)や高千穂峰(たかちほのみね)、天気が良い日は錦江湾や桜島なども見渡せる。
■山を彩るミヤマキリシマも必見
霧島山は九州南部という日本列島のなかでも南に位置しながら、韓国岳のような標高1,700mの高い山もあり、山ごとにさまざまな植物が自生している。とりわけ有名なのが火山性の土壌にも強いミヤマキリシマだ。九州各地の高山に生息しているツツジの一種で、霧島山周辺にも広く分布し、5月中旬から開花を迎えるが、韓国岳周辺は例年であれば6月上旬が見ごろとなる。
ミヤマキリシマの名付け親は、NHKの連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルとなった、植物学者の牧野富太郎博士。木の高さは1mほどなので、開花の時期は淡いピンクの花が絨毯の様に山を包み込む
■「山印帳(やまいんちょう)」を片手に山めぐってスタンプゲット!
霧島山には、山域にある15座を対象としたスタンプラリーを楽しめる「山印帳」というものがある。お寺を参拝したときに集める御朱印長のように、山に登った証を残すことができるのだ。「山印帳」は霧島市観光案内所で売られており、購入してから登山に出かけてもいいし、登山後に入手してもいい。
対象の山に登ったら、登頂したことがわかる顔入りの写真を残すか、登頂軌跡のGPSデータを保存しておき、それを観光案内所に提示するとスタンプをゲットできる。ただし、新燃岳と中岳山頂は現在(2024年3月時点)立入規制区域となっており登頂できないため、無条件でスタンプの捺印が可能だ。
「山印帳」を片手に山をめぐれば、スタンプを集める楽しさと山に対する知識を深めることができ、霧島山の奥深さをより実感することができるだろう。
■天孫降臨神話の神を祀る「霧島神宮」
登山とともに立ち寄っておきたい霧島市の観光スポットのひとつが「霧島神宮」だ。天孫降臨神話に登場する主要な神である「ニニギノミコト」を祀った神社で、6世紀頃の創建と伝わる。
古くは高千穂峰と御鉢(噴火口)の間に神社があったというが、噴火による焼失を繰り返し、この地に移されたのだという。木々の茂った参道を進むと絢爛豪華な装飾が施された朱塗りの社殿が現れる。現在の社殿は1715年に薩摩藩第4代藩主の島津吉貴が寄進したもの。極彩色の「龍柱」のような南九州の社寺建築や薩摩藩独自の地方色などが印象深い。また、本殿・幣殿・拝殿は2022年2月に国宝に指定されている。