■長時間の鮮度維持:効果的な保冷方法

 半日(約6時間)から1日(約12時間)、魚の鮮度を維持するためには、適切な処理に加えて保冷・保存も重要。クーラーボックスに氷を入れて魚を冷やしておけば魚の鮮度は保つことができるが、氷と魚が直接触れないよう、氷の上に新聞紙などを敷いておく配慮が必要。魚が氷に直接触れると、身が焼けたり魚の重みで身が傷んだりして、味の低下につながるからだ。また、保冷は温度を一定に保つことが重要。そのためには、必要に応じて氷をこまめに追加することも大切である。

氷の上に魚を直接乗せると、魚の身が傷む恐れあり

■魚種の特性にあった処理方法:例)アジ、クロダイ、カサゴ

 基本となる魚の処理法は共通しているが、魚種の特性に合わせた適切な処理方法を行うことでより美味しくなる。魚の特性を理解し、迅速かつ丁寧に処理を行いたい。ここではアジ、クロダイ、カサゴを例に紹介する。

【アジ】
 皮が薄く身が柔らかいため、身を傷つけやすい。氷の上に並べて保冷しよう。アジ、サバ、イワシといった足の早い(痛みやすい)魚は、消化酵素が強く内蔵に含まれるバクテリアが身を溶かしてしまうため、できるだけ早く内蔵とエラの処理を行うこと。

【クロダイ】
 皮が厚く、魚体が丈夫。身を保護するために湿らせた布で包み、氷で十分に冷やす。クロダイは皮が身の乾燥や酸化を防ぐ役割を担っているため、皮が剥がれないよう注意し、冷却中も丁寧に扱う。特に複数のクロダイをクーラーボックスに入れる際は、背ビレが身を傷つけやすいので注意。

【カサゴ】
 トゲが多く、取り扱いに注意が必要。トゲは、腹ビレ、背ビレ、胸ビレ、エラ蓋に存在する。トゲが他の魚に刺さらないよう海水に氷を入れた「潮氷」で保冷し、身を崩さないようにすること。ヒレのトゲはハサミやペンチでカットし、適度な冷却で鮮度を保つ。

 処理後の魚は、海水に氷を入れた「潮氷」で保冷するのがおすすめ。海水は、真水と比べ氷点が0℃以下となることから、氷を入れて水の温度を下げて魚の鮮度を保つとともに、潮氷の氷水が魚の身を優しく包み、身が傷つくのを防いでくれる。

■釣り上げた魚を美味しくいただこう!

 適切な処理をしたアジ、クロダイ、カサゴにあった料理の一例を紹介。釣れたらぜひお試しあれ!

【アジ】
 刺身・手巻き:刺身や手巻きのネタとして楽しむことができる。脂がのっている部分が特に美味しい。

 塩焼き:塩焼きはシンプルで美味しいオーソドックスな調理法。塩をまぶして焼くと身がふっくらとして香ばしく仕上がる。

 煮つけ:煮付けにすることで、アジの旨味を引き出せる。しょうゆベースの煮汁に煮込むと、味がしっかりと染み込んだ一品が楽しめる。

【クロダイ】
 煮つけ・炊き込みご飯:身がしまっているため、煮付けや炊き込みご飯に適している。だし汁に煮込むと、旨味が凝縮される。

 蒸し物:身はふっくらしているため、蒸し物としても美味しくいただける。蒸すことで食材の旨味を逃さず、美味しくいただける。

【カサゴ】
 唐揚げ:唐揚げにすると皮や衣がカリッと揚がり、身の旨味を閉じ込めて非常に美味しい。

 煮つけ:カサゴは身がしっかりと締まり、甘みがある。煮つけにすると、独特の旨味が煮汁に染み渡り、しっかりした身に濃厚な味が絡み、甘みが際立つ。

 鍋料理:身がしっかりしていて食べ応えがあり、鍋料理に適している。寄せ鍋などで楽しむのもおすすめ。

カサゴを含めた魚の煮つけ