「日本百名山」には、選定基準があることをご存知だろうか。第一に山の品格、第二に山の歴史、第三が山の個性。そして「おおよそ標高1,500m以上」である。

 ところが、百名山の中には、標高1,500m以上どころか、1,000mにも満たない山が2座選定されている。それが、標高924mの鹿児島県の開聞岳(かいもんだけ)と、標高877mの茨城県の筑波山(つくばさん)である。

 ここではその三角錐の美しい山容と山頂からの展望が素晴らしい「薩摩富士(さつまふじ)」とも呼ばれる開聞岳についてご紹介したい。

■そもそも日本百名山とは

日本百名山には明確な選定条件がある

 日本百名山とは、小説家でありながら登山家でもあった深田久弥(ふかだきゅうや)の選んだ、日本の名山100選のことである。「名山」という抽象的な表現でありながらも、選定条件は明確に示されており、その中の一つが標高1,500m以上である。

■開聞岳が「百名山」に選ばれた理由

海面からそそり立つ、完璧な円錐形の開聞岳

 開聞岳が日本百名山に選ばれた理由。それは、ほかに類を見ない完璧な円錐形と、全身を海中に乗り出したような美しい山容にある。海面から突然そそり立つピラミッド型のシルエットは圧巻。

 その強烈な個性から、開聞岳は「名山としてあげるのに私は躊躇しない」と深田久弥に評され、日本百名山に選ばれた。

■螺旋状の個性的な登山道

個性的な螺旋状の登山道
頂上直下のハシゴ

 開聞岳は登山道も個性的だ。螺旋状にぐるぐると回りながら頂上を目指す。

 富士山などの円錐形火山によくある、放射谷(谷と尾根が交互に出現する地形)がほとんどないため、このような螺旋状の登山道が可能となっている。

 開聞岳登山は、二合目登山口から往復で約5時間半から6時間程度を要する。

 二合目登山口から五合目くらいまでは1時間程度。砂地が続き、滑りやすく、足を取られることがあるので注意が必要だ。見晴らしのよい場所はほとんどない。五合目の展望所からは、池田湖や桜島を望むことができる。五合目から七合目までは35分程度。七合目を過ぎたあたりから、岩場のごつごつした登山道に変化していくが、海側の景色を望むことができ、絶景を楽しむことができる。七合目から九合目までは35分程度だ。

 九合目のハシゴを上り、20分ほどかけて狭い岩場を抜けると山頂に到着する。開聞岳は、全体的にバリエーションに富んだ登山道となっている。

■登山道から展望できる四方の海

登山道からの絶景
溶岩で構成された神秘的な仙人洞

 海に突き出た半島の先に位置している開聞岳の螺旋状の登山道は、道中で四方の海を見下ろす絶景を楽しむことができる。

 その点は体力が必要な山ではあるが、素晴らしい眺望のおかげで乗り切ることができたという登山者は多いだろう。

 また、頂上近くには「仙人洞(せんにんどう)」と呼ばれる洞窟があり、山伏たちの修行の場として使われていたとのこと。