初夏の水芭蕉のシーズンから秋の草紅葉のシーズンまで、いつ訪れても尾瀬の自然は入山者を幸せな気持ちにしてくれる。とりわけ尾瀬の水芭蕉は、文句なしの絶景だ。絵葉書と同じ風景が、どこまでも続く。一生に一度は見てほしい、尾瀬の水芭蕉の魅力を紹介する。

■尾瀬が愛される理由

至仏山と水芭蕉、何度見ても飽きない景色だ

 尾瀬までのアクセスは便利とは言えないが、標高差はわずか200mで登山レベルはハイキングコースに分類され、富士山や槍ヶ岳と違って、初心者でも簡単に行きやすいと思われがちだ。しかし、実際に尾瀬に行った知人の中には「とてもきつかった」と語る人が何人もおり、 簡単と油断しないほうがいい。

 水芭蕉だけならば尾瀬でなくても各地で見られるが、広大な湿原に咲く水芭蕉の大群落と残雪の至仏山(しぶつさん)との取り合わせは、尾瀬ならではの風景だ。

 自然を愛する多くの人が尾瀬の水芭蕉の風景に憧れ、わずか2~3週間という短期間にハイカーが集中する。

■尾瀬の水芭蕉の見ごろ

木道のそばまで、たくさんの水芭蕉が咲く

 例年は、5月下旬から咲き始め、6月上旬が見頃となる。しかし、今年は雪が少なかったため、水芭蕉の開花も早くなると予想されている。

 尾瀬保護財団のHPでは、尾瀬に関するさまざまな情報や、水芭蕉の開花状況なども知ることができるので参考にしてほしい。

参考HP:尾瀬保護財団 https://oze-fnd.or.jp/

■バスを降りたら、ひたすら下る

鳩待峠からは、石畳の階段を下る
鳩待峠から山の鼻までの道には木製の階段もある
いよいよ尾瀬ヶ原に到着(撮影:ブラボーマウンテン編集部)

 尾瀬というと、決まって広い湿原と平らな木道の写真が紹介される。尾瀬の魅力が1枚で伝わるが、この写真の尾瀬しか知らない人は、「尾瀬は全行程が平坦で歩きやすそうだ」と誤解しがち。おそらくバスを降りたら、「平らな木道歩きのハイキング」というイメージなのだろう。

 尾瀬を訪れるハイカーのうち、半数以上が利用する尾瀬の入り口である鳩待峠(はとまちとうげ)。マイカー規制があるため、鳩待峠まではバスやタクシーで入ることになる。鳩待峠から「水芭蕉の湿原」尾瀬ヶ原までは、1時間ほどの「下り」だ。尾瀬ヶ原はスタート地点の鳩待峠よりも標高が低いのである。

 整備された階段や木道を下ると、尾瀬ヶ原の入り口である「山の鼻(やまのはな)」に到着する。そこからは、イメージ通りの平らな木道と湿原が続く。快適なハイキングだ。

 尾瀬ヶ原を十分堪能したら、帰りは当然「登り」だ。階段や木道の登山道を1時間30分かけて登る。一般的な山登りと違って帰りが登りになるため、この1時間30分の登りが最大の難関と言える。

 絶景の尾瀬ヶ原は平坦で歩きやすいが、行きは1時間下り、帰りは1時間30分登ることを念頭に置き、帰りの体力と時間を残しておこう。