いよいよゴールデンウィークが始まりますね。“史上最速”と謳われるほど早かった桜の開花に始まり、続く花々も例年より2週間近く早い見頃を迎えたりと、急ぎ足で季節が進んでいるようです。
雪山に関しても概ね同様で、特に3月は気温が高く晴れた日が多かったために一気に雪が溶けました。しかし、4月に入ってからは寒暖の差が大きく「寒の戻り」で雪が降ったりもしました。そもそもの積雪量が少なかったこともあり、非常にコンディションを読みにくい、まさしく“異例”のGW登山・バックカントリーになりそうです。
北アルプス北部、「栂池自然園」と「白馬乗鞍岳(標高2,469m)」の間にある「天狗原(てんぐっぱら)」周辺は、多くの登山やバックカントリースキーヤー・スノーボーダーで賑わいます。2023年4月28日、小谷村山案内人組合の仕事で、このエリアに設置してある注意喚起のための(冬季用)看板の撤去作業で上山しました。その際に気付いた点を積雪の状態を含めてお伝えしたいと思います。
■やはり例年になく雪が少ないが……
標高約 2,200mの天狗原へは、「つがいけロープウェイ」を降りてから、(雪の下に埋まっている)登山道に概ね沿うように登っていきます。およそ1時間ほど。見た目自体は、25〜26日にかけて積もった新雪のおかげで、案外きれいな雪面です。例年より積雪量自体は少なく、すでに木が密になっているところ、沢筋では穴が開いている箇所もありました。ロープウェイの自然園駅(山頂駅)より下は、滑走に適したラインはないと思っていた方がいいでしょう。下山もロープウェイを利用することを強くおすすめします。くれぐれも最終乗車時間のチェックを忘れずに。
天狗原まで上がってくると、思っていた以上に雪が多く残っています。雪面から出ている木々の高さや、看板の位置から考えると、例年よりやや少ないくらいに感じました。見上げると白馬乗鞍岳の大斜面が広がっています。2,000mあたりを超えるとフリージングレベル以上の日が多かったのでしょう。当然ではありますが、標高や斜面の向きや形状による積雪量の違いが如実に出ているようです。
※一帯にはライチョウが多く生息し、繁殖地もあります。彼らは人に慣れており、むしろ外敵から身を守るための隠れ蓑にしているようなところもありますが、くれぐれもストレスを与えないような行動を。
■春の雪山のリスク
雪山の積雪は多くても少なくてもリスクがあります。今年はいつも以上に沢が開いていたり、滑り込んだ先で雪が繋がっていないことも。目で見て確認できればいいのですが、急な斜面、特に凸状になっているところでは、先が見通しづらいです。繋がっているように見えても、乗ると割れてしまうほど薄くなっているスノーブリッジもあります。
悪天候が予想される時はなるべく入山しないのが無難でしょう。風を伴うような雨雪に晒されると、瞬く間に低体温症に陥ります。“濡れた雪”や一度溶けた雪が冷え込みで凍結(さらに風で磨かれることによって)、容易にカチカチのアイスバーンになるのもこの季節です。滑落のリスクが高いことは想像に難くないですね。逆に、“緩んだ”ずぶずぶの雪も滑り出すと案外止まらないものです。場合によってはクランポンも役に立たないくらいです。滑走する場合には、新雪がうっすらと積もったりすると、その後には“ストップスノー”に足を取られることもあります。スピードを出していると簡単に骨折や靭帯損傷等の怪我につながりますのでご用心を。
天気が良く、気温が上がる日は例年以上に暑くなりそうです。水分やミネラルの補給を怠らず、熱中症などの予防に努めましょう。実際、当日はかなり暑く過酷でした。雪の下で寝ていた木がはぜる(跳ね上がる)こともあります。また、クマもそろそろ冬眠から目覚める頃ですので、常に周囲に気を配っておくことも必要です。