西表島の住民にとってイリオモテヤマネコは「島の先人」であり、食物連載の頂点に立つ「山の神様」として敬意を表する存在だ。大いなる西表島の自然の中で、人間はその自然を構成するちっぽけな一人にしか過ぎない。イリオモテヤマネコは私たちが普段慣れ親しんでいる「イエネコ」とはまったく異なる野生の猫であり、野生(自然)と人間との間には、決して越えてはいけない「一線」があるのだ。
2020年、世界はコロナ禍に飲み込まれ、人間たちの活動自粛によって西表島でも島内の交通量が激減した。その影響でイリオモテヤマネコの交通事故は22年ぶりにゼロになった。しかし、2021年春。約500日ぶりに起きたヤマネコの交通事故の現場に、私たちは再び居合わせることになってしまった。
冷たいアスファルトの上に横たわるヤマネコの目は少し曇りかけ、目尻にはうっすら涙も見えた。車のライトに照らされると光る目。それを見た島の人たちは、昔から「ピカリャー」とも呼ばれている。
太古の昔から島に生き、島の人々と共存してきたイリオモテヤマネコ。その存在がこれからも西表島に在り続けるために、私たちにできることは何なのか? 一人ひとりが考えていきたい。
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仲程長治監督の最新作は、世界自然遺産、西表島の「自然」と「暮らし」を追いかけたエシカル・トラベルムービー。西表島やイリオモテヤマネコに関心を寄せている方に「できるだけたくさん観ていただきたい」という想いからYouTubeにて無料配信中です。ぜひご覧ください。
*Us4 IRIOMOTE の活動についてはこちら→https://www.us4iriomote.org
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*本連載は毎月22日(=ニャンニャンの日)に配信予定です。次回もお楽しみに!