登山オフシーズンは、ザックの奥底を見直すよい機会。今回は、登山や災害時用の非常食として備蓄されることが多い、アルファ米について取り上げる。
アルファ米は、即席ラーメン(乾麺)のご飯バージョンとしてイメージするとわかりやすいかもしれない。水やお湯を加えて待つだけで、おいしいご飯が食べられる優れもので、製品によっては、製造から約5年もの長期間保存できる。
炊きたてのご飯を熱風で急速に乾燥させた製品が主流で、最近はフリーズドライ(真空冷凍乾燥)製法で作られたものも販売されている。
便利なアルファ米だが、炊きたてのご飯のおいしさには、まだ届かない。もし調理方法を選べる状況であれば、よりおいしく食べられる方法を選択したいと思うはず。
備蓄品入れ替えのタイミングで、さまざまな調理法でアルファ米を試食してみた結果をレポートしたい。
■アルファ米5つの調理方法。試食結果はいかに!?
筆者が備蓄していたのは尾西食品の白飯。これを下記の5つの方法で調理してみた。
1. 水を加えて60分待つ
2. お湯を加えて15分待つ
3. 鍋で炊く
4. レンジでチンする
5. 炊飯器で炊く
●調理方法1. 水を加える
注水して60分後、一口目に感じたのは、「こんなにおいしかったっけ?」。7年前に食べたときの印象とはまるで違い、驚いた。
ほのかに甘味があり、アルファ米特有のにおいはそれほど感じない。食感は全体的にはほどよかったが、一部芯の残る(米の中心が固い)粒があった。2時間後には、芯の残る粒もなくなり、「冷めたお弁当のご飯」と遜色なかった。後述する「2.お湯」で戻したものよりも、においが少なく好みだった。
注水後、1時間おきに試食したところ、3時間後まで特に変化はなかったが、4、5時間後は、ぽそぽそする感じが気になった。
炊きあがったご飯など、加水加熱してデンプンが食べられる状態になることを「アルファ(α)化」または「糊化(こか)」というが、この状態のデンプンは、時間が経過し温度が下がるにつれ「老化」する。でんぷんに入った水が抜け、分子がきれいに再結合するため、固くなる。服についたまま時間が経過したご飯粒が「カピカピ」に固くなる、あれだ。
注水したアルファ米も時間が経過するにつれ老化していく。メーカーも調理後は早めに食べることを推奨している。縦走登山時など就寝前に注水し翌朝に食べる人もいるが、注水後あまり長い時間の放置は、味覚的にも衛生的にも控えた方が無難だ。
【水で戻す方法のおすすめシーン例】
1. 遭難時や災害時、調理器具が使えない場合
2. 登山時の昼食や夕食に(食べる1〜2時間前に注水)
3. 自宅や山で雑炊やチャーハンなどにする場合(調理する1〜2時間前に注水)