「西穂山荘」は穂高連峰の南西にある山小屋だ。「新穂高ロープウェイ」の山頂駅から歩くこと、片道約1時間半でたどり着ける。丸山や西穂独標へのピストンで登山を楽しむ人から、その奥にそびえる穂高岳山荘や槍ヶ岳へ縦走をする人まで、多くの登山者の拠点として利用されている。
この西穂山荘には、名物グルメ「西穂ラーメン」があることをご存知だろうか。西穂ラーメンは、岐阜県高山市のご当地ラーメン「高山ラーメン」のスタイルを取り入れた、上品な味わいが特徴のラーメンだ。その味は、麓のラーメン店に劣らないクオリティを誇り、登山者の間で話題になっている。しかも宿泊者でなくても、立ち寄って食べられるというではないか!
ラーメンをよりおいしく感じる冬が訪れた。さっそく“西穂ラーメン”というピークを踏むための旅へ出かけることにした。
■2020年にリニューアルしたばかり。2階建てロープウェイに初乗車!
旅を決行したのは、雪が積もり始めた11月末。朝8時に新穂高ロープウェイの駐車場に到着し、8時半には山麓駅の新穂高温泉駅から第1ロープウェイに乗り込んだ。しらかば平駅でいったん降車して、第2ロープウェイに乗り替え、山頂駅へ。
国内唯一の2階建てで有名なこの第2ロープウェイは、じつは2020年にリニューアルされたばかりなのだ。そのスペックやデザイン性の高さ、大きな窓から見えるパノラマビューに、一瞬ラーメンを忘れてしまうほど興奮してしまった。
■樹林帯をのんびり歩き、あっという間に山小屋に到着!
西穂高口駅の屋上展望台で写真撮影をひとしきり楽しみ、駅舎内のレストランで、“頂”という文字が載った揚げたての「頂コロッケ」を食べて小腹を満たしたら、さっそく雪の上へ!
ちなみに私は、この旅が本格的な雪山登山デビュー。この日は、旅にも同行してくれた先輩に借りた12本爪のアイゼンをバックパックに忍ばせつつ、靴にはチェーンスパイクを装着して歩いた。
「西穂ラーメンを食べに行く」という大きな動機に背中を押されて、これまで経験したことのない雪山登山に一歩踏み出した私。なんとなく「雪山って、難しそう」という印象をもっていた。
実際に歩いてみると、天候にも恵まれ積雪の具合もちょうど歩きやすく助かった。道中にある標識も有難い。「むしろ夏山よりもヒザに優しくて歩きやすいのでは?」という新しい気づきを得た。ただ、今回は条件がよかっただけで、途中には急坂もあり、コンディションが違えば苦戦することは想像できる。そこが冬山の怖さでもあり、醍醐味でもあるのだろう。