■腹ごしらえ? にリアルピーク「丸山」を目指す

手前から、西穂山荘、焼岳、乗鞍岳。高度を少し変えるだけで、景色がダイナミックに変化する

 雪を踏みしめながら順調に進み、コースタイム通り1時間半で西穂山荘へ到着してしまった。時刻は午前11時。ブランチとして食べるラーメンもいいけれど、さすがにちょっと早すぎるということで、少しだけ先へ足を延ばすことにした。目指すは、西穂山荘からさらに片道30分ほどでたどり着ける、標高2,454mの「丸山」だ。

 山小屋から先は、樹林帯から稜線の道に変わる。風も強くなく、湿った雪で歩きやすかったので、チェーンスパイクのままで進んだ。ザクザクと標高を上げていくと、数日前に降ったばかりの雪がハイマツや岩を白く覆う光景が目の前に。振り返ると、山小屋とその後ろに聳える焼岳の雄姿がお目見え。雪があるからこそ陰影が生まれて、山々がよりいっそう立体的に見えるのだなと思った。

 丸山までの稜線歩きでも充分に雪山の醍醐味を味わうことができたので、丸山山頂で少し休憩したら、くるりと引き返して西穂山荘へ。

稜線上には、くるぶしくらいまでの深さの雪が積もっていた(2021年11月30日現在)
丸山の山頂はとても広々。西穂独標までは、ここからさらに片道1時間ほど
降りた先にラーメンが待っていると思うと、足取りもとても軽い

■旅のピーク、名物「西穂ラーメン」をいただきます!

山小屋の玄関に入る前に、アイゼンを脱いでおくことをお忘れなく
食堂兼売店。手ぬぐいやバッチなどの定番お土産のほか、西穂高ソックスや西穂山荘支配人の粟澤徹さんが執筆した『山のお天気教室』も販売されている

 本来の目的? 旅の本当のピークにたどり着けたのは、午後12時頃。景色が見える窓際のカウンター席を先輩とふたり並んで座り、西穂ラーメンの醤油味と味噌味をそれぞれ頼んでいただいた。

 まずは醤油味のスープを一口。氷点下の世界を歩き冷え切った身体のなかに温かさがなだれ込んできた。と同時に、鰹だしの風味と醤油の香りが口に広がる。美味。続いて、細麺をすすってみる。なめらかで口触りのよい麺が、スルスル〜っと舌の上を通過していく。これまた、美味。

 ここで注目したいのが、西穂山荘が、標高2,367mの山の上にあるということだ。沸点が低いため、麺をいい状態で茹で上げるのはなかなか難しいはず。しかし西穂山荘では、飛騨高山ラーメンの代名詞とも言える「極細ちぢれ麺」を使い、絶妙な食感の麺に茹で上げているからすごいのだ。

 味噌味のほうもいただいたが、こちらは繊細な味わいの醤油味と異なり、濃厚な味わいに仕上がっていた。白米と一緒に食べたら、おかずとしても成立するかもしれない(白米は+300円)。

西穂ラーメンの醤油味(900円)。スープには鶏をベースに鰹の旨味を効かせ、かえしには香り豊かな醤油を使用
西穂ラーメンの味噌味(900円)。醤油味とは異なり、濃厚な味わい。信州味噌を使用し、香味野菜と南蛮エビがアクセントとして加えられている
白身のやさしい弾力で癒しを与えてくれたのが、こちらの煮卵だ。卵黄の半熟度合いも絶妙

 こうして、私の雪山登山デビュー&西穂ラーメン登頂の旅は無事に終わった。穂高岳のいわゆる“名山”の頂はひとつも踏んでいないけれど、達成感はひとしお。グルメ目的の山登り、おすすめですよ。