東京オリンピック開催を目前に控え、新競技クライミングへの注目は日ごとに増すばかり。クライミングの魅力とは一体なんだろう。その疑問を紐解くべく、70年代に一世を風靡した先鋭的フリークライマー集団「ストーンマスターズ」の中心人物の1人、マイク・グラハムに話を伺った。

 クライミングを始めた由来について話してもらった前編に続き、後編は世界中のクライマーたちが真似した彼ら独自のファッションが誕生した裏話から、フリークライマーから見たオリンピック競技に至るまで、話を広げてみたい。

(前編はこちら)

Profile:マイク・グラハム  1956年生まれ。クライミングウェアブランド「ロックス」、「ストーンマスター」の創業者。70〜80年代にかけて、ヨセミテを拠点に仲間たちと共に数々の初登攀や難ルートのフリー化に成功し、当時のクライミング界を牽引した。

世界中のクライマーが憧れ、真似したあのスタイルの由来

頭にバンダナ、パンツを白で決めるスタイルは世界中のクライマーに真似された

—ストーンマスターズといえば、バンダナを巻いて、白いパンツ、上半身は裸という独特なファッションスタイルで有名ですね。

 たしかに、それが私たちのユニフォームであり、スタイルでした。でも私たちが着始める以前、60年代にはすでに白いパンツを愛用しているクライマーはいましたよ。海軍が払い下げた白いベルボトムのミリタリーパンツで、安くて丈夫。しかも、白は夏でも涼しい。当時、カリフォルニア中のロッククライマーのユニフォームだったと言っても過言ではありません。

—では、バンダナを巻くスタイルは、どうして始まったのですか。

 ずっとクライミングに明け暮れていたので、みんな髪が伸び放題で邪魔だったし、汗をかいたときにもバンダナは便利でした。ジム・グリッドウェルが着け始めたのが最初だと思います。自宅にあったお父さんのバンダナを持ってきて、私たちにもくれたんです。

このルックスに圧倒的登攀力。人気になるわけだ

—裸で登っていたのはなぜですか?

 日焼けをしている方がイケてるし、モテると思っていたからです。たくさんシミが出てきてしまい、今となっては少し後悔していますが。私たちは、これらのスタイルを特に意識して作ったわけではありません。現在のようなスポンサーという考えもなかったので、仲間たちはただただ着たいものを着ていた。それをメディアが広めた、っていうだけなのです。