■スポーツクライミングとアウトドアでのクライミングの違い
—2020年の東京オリンピックで、クライミングが競技として採用されたことについては、どう感じましたか?
クライミングが競技化されるなんて、とても興味深い出来事ですね。トラディショナルなサーフィンやクライミングは、とても個人的な取り組みだと思っていたので、それが競技になるなんて想像もしませんでした。クライミングの裾野が広がることは、とてもいいことだと思います。
—スポーツクライミングとマイクさんが取り組んできたようなトラディショナルなクライミングの違いについては、どう考えていますか。
ジムで練習すれば急速に技術は上達するし、クライミング向きの体が作れるといういい面はあります。が、反面、クライミングを覚えるプロセスとして、フィジカルやスキルが中心になってしまいます。外岩からクライミングを始めた方が、上達の度合いはゆるやかなので、今の人たちはジムで登る方を好むでしょう。しかし、外岩でゆっくりと学んでいった方が基礎となる部分はしっかりと作られます。ジムはスポーツ的に体を鍛えるにはいいかもしれませんが、岩場で学ぶと体と同時に頭を鍛えることができるのです。
—頭が鍛えられるというと?
例えば外ではジムと違い、トップロープ(すでに誰かが先に登っていて、ビレイのある状態で登ること)で登れるシチュエーションばかりではありません。自分で考えながら、リード(一番先頭で登ること)で登る経験はとても大切なのです。たとえトップロープで難しいルートを登れたとしても、リードで同じ難易度のルートを登れると限りません。逆にリードで登り慣れていれば、同じ難易度のルートをトップロープで登ることはイージーでしょう。クライミングの能力とは、オンサイト(ほかに参考となる先行者がいない状況)で登る能力だと思うのです。
—なるほど。たしかにジムよりも外岩の方が、自分で考えなければいけない状況は多いですよね。
トップロープで登れても、本当の意味でそのルートを理解したとは言えないでしょう。常にトップロープで登っていると、いざリードをした時には体が強張り、実力を発揮しきれないこともあります。チョイスがあるなら、普段からぜひリードでも登るように心がけてほしいですね。
—最後に、これからクライミングを始めてみようという方々にメッセージをお願いします。
ジムでクライミングを始めるのもいいですが、ぜひアウトドアの岩場にも足を運んでみていただきたい。フィールドで仲間とキャンプをしたり、ビールを飲んだり、知らないクライマーと交流する機会も、全てが素晴らしい経験になります。登るときには、トポに載っている難易度は気にせずに、登ってみたいラインを見つけて、まずはやってみることが大切です。何事も自分で触れてみることで、初めてわかることはたくさんありますから。
取材協力&写真提供:
ROKX(ロックス )