全国各地の田舎で過疎や高齢化が進む理由の一つは、「仕事がないこと」だと言われています。田舎ならではの自然や文化を生かして、地域に仕事を生み出すことはできないのでしょうか。

 10年前、和歌山県・龍神村に移住した著者は、“幻の熊野古道・奥辺路の再生“を軸に、地域資源を生かしたエコツアー作りに取り組んできました。しかし、この春、実施したツアーを通して見えてきたのは、「田舎ならではの自然体験」だけでは、人は動かないという現実でした。

◼️春のツアー開催を通して見えてきたこと 

僕は10年前に和歌山県の龍神村に移住しました

 10年前に和歌山県の龍神村に移住した僕は、“幻の熊野古道奥辺路の古道再生”という観光資源を生かしたツアー作りに取り組んでいます。この春は、4本のエコツアーを企画しました。

 結論から言えば、過疎の村でもエコツーリズムは成立します。ただし、“自然が豊か”というだけでは人は集まりません。今回のツアーで参加者が求めていたのは、自然そのものではなく、その土地で暮らす人との出会いや価値観の変化でした。

ただ遊ぶだけではなく、“田舎のリアル”に触れてもらうことも大事

 大手アウトドアショップと組んだ登山道整備を体験できる「道普請ツアー」は定員に届かず中止。一方、地元ツアー会社と企画したアウトドア企画では、龍神村エリアならではの豊かな自然の中で行なったトレイルランニングが、冒険的な体験として参加者に喜んでもらえました。

 また、林業と農業の話を交じえながらの収穫体験では、耕作放棄地や山仕事の現状について、実際に地域で暮らす人の声を聞いてもらう機会にもなりました。ただ遊ぶだけではなく、“田舎のリアル”に触れてもらえたことも、参加者の満足度につながったようです。

求められていたのは、“地域ならではの自然体験と、その先にある価値観の変化”でした

 この経験からツアー主催者として学んだのは、エコツアーに参加するお客様が求めるのは “地域ならではの自然体験と、その先にある価値観の変化”だということです。参加者は、単なるレジャーとしてではなく、地域の暮らしや社会課題にも触れながら自然を体験することに価値を感じているようでした。

◼️手応えがあったのは、ファストハイクと地元高校生向けの企画

約100kmを36時間かけて歩く1泊3日のファストハイク企画も好評でした

 夜の高野山から熊野本宮まで約100kmを36時間かけて歩く1泊3日のファストハイク企画も好評でした。参加者は星空や朝日、龍神村での滞在、果無山脈の深い森を楽しみながら、奥辺路の魅力を全身で体験しました。後日には報告会の開催も決まり、単発のイベントではなく継続的な活動につながる手応えも得られました。

地元・高校生向けの道普請ツアー

 もう一つ手応えを感じたのが、高校生向けの道普請ツアーです。奥辺路の歴史や地域の自然について学びながら道を整備する取り組みで、地域貢献と学びを両立する“ネイチャースタディ”として価値を感じてもらえています。

奥辺路の歴史や地域の自然について学びながら道を整備する取り組み