勢いで移住してから仕事を探すのか、それとも移住前に仕事を探すのか。もしくは、リモートワークや手に職を持って、移住前と変わらない仕事が出来る状態で移住するのか。

 “仕事”は移住を考える方々にとって、非常に大きな問題でしょう。そもそも、移住してからそこで何をしたいのかも大切です。

 僕は移住から10年、現在は3つの仕事を軸にしています。3足のわらじを履く僕の実体験をお話します。

■二拠点で生活基盤を作っていくイメージでスタート

移住前は京都を拠点にトレイルランニングのイベントやガイドをしていました
数年かけて和歌山でもツアーをできるようになる計画を立てました

 移住前の僕は、住んでいた京都で山を整備しながら、イベントやガイドを生業にしていました。京都でトレイルランナーのコミュニティを持っていたので、週末は京都周辺でツアーを行い、平日は移住を検討していた和歌山県の龍神村で暮らしの基盤を作ろう。当初はそんなビジョンがありました。

和歌山でツアーを行うこともありました

 確かな計画があった訳ではないのですが、「まずは二拠点生活で、京都で収入を確保しつつ、龍神村で畑でもしながら、数年かけて和歌山でのツアーやイベントをやれる状態に持っていこう」くらいのイメージでいました。

 実際に龍神村に引っ越しするまでには、京都のお客さんを和歌山ツアーにお連れしたり、龍神村や周辺のトレイルの探索をして、理想とする生活イメージの解像度を上げていきました。

■好きなことを仕事の1つにしてみる

イベント出店も大きな収入源の1つです

 ツアーに加えて、現在僕の生活基盤の1つになっているのが自家焙煎した珈琲の販売です。

 この仕事は、移住後に珈琲焙煎機の販売をしている方に大阪でたまたま出会い、焙煎を習ってスタートしました。大好きな珈琲を自分で焙煎できるなんて思ってもみなかったので、ワクワクが止まらなかったことを覚えています。

 京都でのツアーでは、山で珈琲を淹れて提供していたので、自分が焙煎した珈琲を出せたら良いなと考えました。さらに豆も販売できれば収入にもなると思い、早速小型の焙煎機を購入して焙煎を始めました。

店名は「豆んと森」と名付けました

 焙煎技術とは、味覚を研ぎ澄ませる技術でもあります。僕の師匠からは、「珈琲の味の細かな違いが分かってそれを言語化できるなら、焙煎技術は高めることができる」と言われました。自分で焙煎した豆をもう少し深煎りにしたいと思い、時間や豆を見て深煎りに焙煎することはできても、どう味が変わったのかが頭で分からなければ、焙煎技術を高めることはできないのです。

 以降も、珈琲焙煎のセミナーに参加して他の参加者と切磋琢磨したり、自家焙煎のカフェを巡ってロースターに話を聞いてみたりしながら、技術を高めていきました。

 自家焙煎をするようになると、珈琲の世界はぐんぐんと広がり、自分の好きな珈琲の味は「こんな味だ」とはっきりわかるようになりました。

大阪市内のランニングショップにイベント出店した時の1枚

 このように、山で珈琲を淹れることから自家焙煎を始めた結果、珈琲の楽しみ方が増え、収入にも繋がって人生が豊かになりました。自分のやりたいことに付加価値を付けていく形で仕事を増やしていくと、やりたいことをしながら収入も増やせるのではないでしょうか。