暦の上では寒さが和らぐ2月下旬。日は徐々に長くなり、釣り人の心を水辺へと誘う頃である。今回はこの季節の移ろいを肌で感じたいと、茨城県・牛久沼(うしくぬま)の水郷エリアへ、寒明けのタナゴ釣りに出かけた。寒さの中に潜む春の気配を感じた釣行の模様をレポートする。
■十数年ぶりの牛久水郷でタナゴ釣り

今回訪れたのは、牛久沼に流れ込む谷田川(やたがわ)の脇を流れる小水路。広大な田んぼの中を走るこの水路で、タナゴ(タイリクバラタナゴ)釣りを楽しむのは実に十数年ぶりだ。以前と比べて周囲には住宅地が増えたものの、かつて足繁く通った釣り場は変わらず残っていた。そのことが何よりもうれしい。
「果たして、昔のようにタナゴは釣れるのだろうか?」 期待と不安が入り混じるなか、午前8時前に現地へ到着した。
水路をそっと覗くと、驚くほど水は澄み、水底まではっきりと見えた。しかし、魚の姿はない。おそらく、日の出直後で水温が低く、まだ障害物の影などに身を潜めているのだろう。気温2℃、水温6℃と厳しい冷え込みだが、太陽が昇れば水温も上がるはず。それに伴い魚の活性も上がると信じ、しばし水辺でその時を待つことにした。
■水温1℃上昇でようやく魚が動き出す

釣り開始から約1時間半が経過した午前10時前、水中に魚の姿が見え始めた。この時の水温は7℃と、朝より1℃上昇。わずかな変化ながらも、魚の活性は上がったようだ。しかし、なぜか筆者の釣りエサにはほとんど反応を示さなかった。
その後、魚が口を使わない原因を探るうちに、ウキ下(ウキからハリまでの長さ)が合っていないことが判明。この時、魚たちは川底ギリギリにいたのだが、筆者が探っていたのはそれよりわずかに上の層で、それが食わない理由だった。そこでウキ下を調整し、魚のいるタナにエサが届くように合わせたところ、途端に食いつきが良くなった。

驚くべきは、その差がわずか2cmほどだったこと。まるでこの2cmの間に見えないバリアーがあるかのように、魚たちは目線より上にあるエサには口を使わなかった。水の透明度が高いため、エサが見えていないとは考えにくい。おそらく、水温が低すぎて体を思うように動かせず、わずか2cmの差でもエサを追うのが困難だったのだろう。

今回の釣り場は水の透明度が高かったため、魚の動きを確認しながら対策を講じることができた。しかし、もし水が濁っていたなら魚がいないと誤解し、途中で釣りを諦めていたかもしれない。タナゴ釣りの奥深さを改めて実感する貴重な経験となった。
使用したタックルと道具は以下のとおりである。
【筆者の使用タックル】
ロッド:タナゴ竿 長さ40cm
仕掛け:タナゴ釣り用の連動シモリ仕掛け
エサ:タナゴ用のグルテンエサ(練りエサ)
【あると便利な道具】
小物用の針外し:魚に触れず針が外せる
練りエサ入れ:練りエサの乾燥を防いでくれる
折りたたみ椅子:釣り場での腰掛け
水汲みバケツ:釣った魚を生きたまま一時的に入れておくもの
エアーポンプ:水汲みバケツに入れた魚に酸素を供給するポンプ
小型の観察水槽:釣った魚を横から観察できる
手洗い用の水:ペットボトルに水道水を入れて用意
タオル:濡れた手を拭くために使用
