11月下旬の茨城県・牛久沼(うしくぬま)の水郷エリアでは、稲刈りを終えた田んぼが広がり、周囲は冬枯れの色合いが濃くなっていた。背丈ほどの葦が風に揺れ、季節が確実に冬へ向かっていることを静かに伝えている。
今回、筆者が寒ブナ釣りを楽しんだのは、牛久沼へ流れ込む西谷田川(にしやたがわ)の土手下にある農業用小水路、通称「ホソ」である。寒の時期(12〜2月頃)になるとフナ(ギンブナやキンブナ)が越冬のために集まるとされており、昔から地元の釣り人に親しまれてきた場所だ。
筆者は昨冬、久しぶりに寒ブナ釣りを再開し、その面白さに改めて魅了された。今年もその魅力に引かれるように、このホソへと足を運んだ。冬の静かな水辺で、果たして今年も寒ブナたちと出会えるだろうか。そんな期待を胸に釣り場へと向かった。
■冬のフナはどこにいる? 越冬場所を探す謎解きゲーム
寒ブナ釣りの魅力は、冬場のフナがどこで過ごしているのかを読み解く“謎解き”にあると筆者は考えている。水温が低下するとフナの動きは鈍くなり、できるだけ水温が高く安定した場所へ移動するとされる。本流の西谷田川であれば、水深があり流れが緩い淵などが越冬先となるだろう。
一方で、筆者が今回釣り場に選んだホソ(水門を介して西谷田川と通じている)を越冬場所として利用するフナもいる。冬のホソは水の動きがほとんどなく、水温変化が小さいので彼らにとって居心地がよいためだ。
ただし、ホソであればどこでもよいわけではなく、フナの好むホソがあり、さらにホソの中においてもフナの居場所は大きく変わる。よって“どこにいるのか”を探し当てられるかどうかが釣果を大きく左右する。
群れを見つけられれば数釣りも可能だが、外せば貧果に終わる。筆者は、この居場所を探すゲーム性にこそ寒ブナ釣りの面白さがあると感じている。
■冬枯れたホソを歩くシモリウキでの探り釣り
釣行日は小春日和の穏やかな一日だった。午前9時に釣りを開始し、まずは歩きながら広く探る“探り釣り”からスタートした。場所によって水深が微妙に異なるホソでは、エサが常に川底に届くようにしたかったため、仕掛けはシモリウキ(水中に馴染むタイプ)を用いた。ホソの水深は60~80cmほどで、歩きながら数mずつポイントを変えていく。
開始してほどなく、クチボソやタモロコといった小型のコイ科淡水魚が次々に掛かった。魚の活性自体は悪くない。
しかし外道が多い状況では、本命のフナがいても先にエサを取られてしまう可能性があるため判断が難しい。そんなことを考えながら慎重に探っていると、ようやく待望のフナが姿を見せた。サイズは10cmほどのいわゆる“お兄ちゃんサイズ”。牛久沼周辺のホソでよく釣れる寒ブナの平均的な大きさである。今年も無事に本命に出会えたことで、思わず胸をなでおろした。とにかく嬉しい一匹である。
しかしその後は再び外道が続き、移動と探り直しを繰り返す展開となった。ホソは一見どこも同じに見えるが、ほんの数mの違いで魚の気配は大きく変わる。この“差”を歩きながら探すことこそ、冬の釣りならではの面白さでもある。