■昼間、ヤツデに集まる虫たち

 ヤツデに集まる虫たちの種類は、昼と夜で異なる。昼間は昼行性の虫たちが、夜は夜行性の虫たちが集まるのである。

 昼間に集まるのは「ハエ」や「ハナアブ」だ。

ヤツデに集まるハナアブの仲間

 ちなみに、ハナアブは名前に「アブ」とつくが、じつはハエの仲間。アブというと人を刺すイメージがあるが、ハナアブは専ら花の蜜を吸う。花粉を媒介して植物の受粉を助けるため、むしろ「益虫」として扱われる昆虫なのだ。

 暖かい日のヤツデの花には、このようなハエたちが蜜を吸いに来ていることがある。ハナアブにはさまざまな種がおり、細長い姿をしたものから寸胴な姿のものまでいる。また昆虫のなかでも、カラフルで華やかな姿をしているものが多い。ヤツデの上では、このようなバリエーション豊かな姿のハエたちを、同時に複数種観察できることも少なくない。

■夜、ヤツデに集まる虫たち

 夜間にヤツデに集まるのは「蛾」だ。蛾のなかには冬に活動するものも少なくなく、特に「ヤガ科」に属するグループがヤツデの花を訪れることが多い。

ヤツデの花を訪れる蛾

 蛾のなかには、「キリガ」と呼ばれるものたちがいる。キリガを漢字で書くと「冬夜蛾」だ。漢字を見ると連想しやすいが、キリガとは”冬の間に出現するヤガ科の昆虫たち”という意味だ(※「ヤガ科キリガ亜科」というグループがあるが、上記の「キリガ=冬夜蛾」はこのグループを指すわけではないことに注意)。

  夜のヤツデの花では、このキリガたちに出会うことができる。キリガには「晩秋にだけ現れるもの」「成虫の姿で越冬するもの」「早春に現れるもの」と多様な種がいる。つまりヤツデに集まるキリガでも、11月に出会える種と1月に出会える種は変化する。このような楽しみ方は、多様な種がいる昆虫観察ならではの醍醐味だ。

 冬というと昆虫のイメージの薄いシーズンだが、冬にのみ出現する虫がいて、この季節ならではの観察の楽しみがある。ヤツデはそうした虫たちを身近な場所で見られる植物なので、ぜひ注目して観察してみてほしい。